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移行困難システムの約69%はベンダー撤退が原因(デジタル庁・総務省調査)。78自治体が代替事業者を見つけられない状況で、特定移行支援制度・次期候補ベンダー選定・データ移行準備の進め方を2026年最新情報で解説します。
全国1,788団体が標準準拠システムへの移行を進める自治体システム標準化。その移行困難システムのうち約69%は「ベンダー撤退」が原因であることが、デジタル庁・総務省の調査で明らかになっています。
2026年5月時点で移行困難に該当する935自治体・8,956システムのうち、担当ベンダーが「標準準拠システムを開発しない」と通告し、かつ代替の調達見込みが立っていないケースが多数を占めています。このような状況に直面した自治体はどのような対応を取るべきなのか、公式の支援制度と実務手順を整理します。
自治体システム標準化に取り組むITベンダーがプロジェクトから撤退・縮退せざるを得ない背景には、複数の構造的な要因があります。
総務省・デジタル庁が策定した標準仕様書(20業務対象)は、2022年8月の初版策定後、現在にかけてほとんどの仕様書が3回以上の改版を繰り返しています(日経クロステック、2024年4月)。
仕様書はシステム構築の設計書として基礎を担う存在ですが、その基礎が確定しない状態では、ベンダーは予算・人材・スケジュールを確定できません。複数のITベンダー担当者が「仕様が固まらないプロジェクト」「開発スケジュールが狂いまくっている」と証言しており、初期計画を全面的に見直さざるを得ない状況が続いています。
flowchart TD
A["標準仕様書\n2022年8月初版"] --> B["改版繰り返し\n(3回以上)"]
B --> C["ベンダー開発計画\n崩壊"]
C --> D["リソース・費用\n高騰"]
D --> E["採算悪化"]
E --> F["標準準拠システム\n開発断念"]
全国1,700以上の市区町村が同一期間(2025〜2026年度)に一斉移行を求められたことで、ベンダー側のエンジニア・プロジェクトマネージャーが絶対的に不足しました。
富士通・富士通Japanは2024年、約300の顧客自治体に対して「2025年度末までの移行完了は困難」と通知しました(日経クロステック、2024年10月)。大手自治体ITベンダーのRKKCSも2025年10月、受注中の123団体のうち約半数に移行間に合わないと通知しています。
これはベンダーの怠慢ではなく、同時多発的な需要に対してエンジニア総数が物理的に足りない状態です。
標準仕様書の改版による追加開発コストは契約単価に反映されにくく、ベンダー側が赤字を抱えながら開発を継続するケースも報告されています。中小規模の自治体向けパッケージを提供してきた地場ベンダーの中には、採算悪化を理由に標準準拠システムの開発自体を断念する選択をしたところもあります。
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デジタル庁・総務省の調査(2025年12月末時点)によると、標準化対象システム34,592のうち約8,956システム(25.9%)が「特定移行支援システム」に該当する見込みで、935自治体(52.3%)が影響を受けています。
移行困難の主な理由はこのように分類されています(東洋経済オンライン、2024年):
| 移行困難の理由 | 該当団体数 | 割合 |
|---|---|---|
| ベンダー撤退(標準準拠システムを開発しない) | 78団体 | 約69% |
| 個別開発システム(標準仕様への対応困難) | 約34団体 | 約31% |
| ベンダーリソース不足による遅延 | (複合) | — |
171団体のうち78団体が「現行ベンダーが対象システムについて標準準拠システムを開発せず、代替の調達見込みが立たない」状況にあるとされており、この78団体が最も対応の緊急度が高いグループです。
移行間に合わない業務別では、「共通機能」が最多の76団体、次いで「障害者福祉システム」が54団体となっています。
デジタル庁・総務省が提示している「特定移行支援制度」と「移行困難システムへの対応手順書」(総務省、2025年)に基づき、実務的な初動対応を整理します。
flowchart TD
A["現行ベンダーから\n標準準拠システム非開発の通告"] --> B["STEP1: 状況把握と\n特定移行支援申請検討"]
B --> C["STEP2: 現行ベンダーへ\nデータ移行仕様確認"]
C --> D["STEP3: デジタル庁\n情報提供スキーム活用"]
D --> E["STEP4: 次期ベンダー\nRFI・RFP実施"]
E --> F["STEP5: 現行ベンダーとの\n過渡期対応合意"]
ベンダーが標準準拠システムを開発しないと明らかになった場合、まず「特定移行支援システム」への申請を検討します。この制度により、移行予算措置が最大5年間(最長2030年度まで)延長され、国が財政支援を継続します。
申請の対象となる主な条件:
次期ベンダーが確定しない期間においても、現行ベンダーに以下を確認・合意しておくことが重要です(総務省手順書、000904550.pdf):
次期ベンダーが決まってから確認を始めると、データ移行開始まで数ヶ月の遅延が生じます。確定前から並行して準備を進めることが、最終的な移行完了を早める鍵になります。
デジタル庁は「事業者撤退等自治体への移行支援策について」という情報提供スキームを運用しています。このスキームでは、次期候補事業者に関する情報をデジタル庁経由で提供しており、自治体はRFI・RFPの参考資料として活用できます。
ただし、「提供された情報から次期事業者を選定することを求めるものではなく、あくまで自治体において次期事業者を選定する際の参考資料」(総務省手順書)という位置付けであり、最終的な事業者選定は自治体の判断となります。
次期候補ベンダーが見つかった場合は、速やかに標準準拠システムの「提供開始可能時期」を確認します。また、この時点で現行ベンダーとのデータ移行に関する調整(データクレンジング方法・移行ファイルの形式等)を早急に開始します。
RFIの内容について、詳細を当初から求めることでかえって情報が得られないケースもあるため、まずはパッケージ製品の標準仕様対応の有無・提供可能時期など必要最小限の情報に限って情報収集することが推奨されています(総務省手順書、000904551.pdf)。
ベンダーが切り替わる場合、次期ベンダーの標準準拠システム稼働開始まで現行システムの継続運用が必要になります。この「過渡期」をどのように設定するかを、現行ベンダーと明確に合意しておくことが不可欠です。
過渡期対応として確認すべき主要項目:
総務省の「移行手順書」では、ベンダー撤退を含む移行困難ケースに対して、以下の3つのアプローチが示されています。
パターンA(ベンダー継続・標準化対応): 現行ベンダーが最終的に標準準拠システムを開発する場合。仕様確定後に移行計画を再策定。
パターンB(ベンダー切替): 現行ベンダーが撤退し、新たなベンダーの標準準拠システムに切り替える場合。RFI・RFP・データ移行の全工程が発生する。
パターンC(Fit&Gap後の個別調整): 標準仕様書に基づいたFit&Gap分析を先行して実施し、次期ベンダーとの契約条件の基礎とする。現行ベンダーからの提供資料がなくても実施可能。
ベンダー撤退が確定した場合でも「①個別開発の場合のFit&Gap分析」は実施可能であり、次期ベンダーとの交渉を有利に進める材料になります(総務省手順書)。
次期ベンダーの候補を探す際に有効なのが、APPLIC(地方公共団体情報システム機構)の準拠登録製品一覧です。ここには各業務の標準準拠システムとして登録済みの製品が掲載されており、調達候補の絞り込みに活用できます。
標準準拠システムを開発している主な事業者カテゴリは以下のとおりです:
| カテゴリ | 代表的な事業者 |
|---|---|
| 大手SIer | NEC、富士通Japan、日立製作所(業務によって異なる) |
| 自治体特化ベンダー | TKC、ぎょうせい、電算 |
| 地域クラウドベンダー | RKKCS、JIP |
| クラウドネイティブ系 | TeamSpiritなど新規参入事業者 |
ただし、各事業者の「提供可能時期」は業務・地域によって異なるため、RFIで個別に確認することが必要です。
ベンダー撤退に伴う移行では、通常の標準化移行よりもコストが増加するケースが多く報告されています。特に、以下のコストが発生しやすくなります:
特定移行支援システムとして認定された場合、国の財政支援(デジタル基盤改革支援補助金等)が継続適用されますが、全額補助ではないため、自治体の一般財源から一定の負担が生じる可能性があります。gcinsight.jp のコスト情報で最新の補助金制度と各自治体のコスト状況を確認することができます。
特定移行支援システムに認定された場合の移行完了目標は、2026年度(令和8年度)から最長2030年度(令和12年度)となります(国と地方のシステムWG資料、2025年11月)。
業務・団体区分別の完了予定分布(2025年10月末時点の調査より):
| 団体区分 | 2026年度 | 2027年度 | 2028年度以降 |
|---|---|---|---|
| 指定都市 | 14団体 | 15団体 | 残り |
| 特別区 | 22団体 | 9団体 | 残り |
| 中核市 | 46団体 | 34団体 | 残り |
移行完了が2028年度以降となる自治体は、現行システムの維持・保守契約を少なくとも2027年度末まで延長する契約交渉が必要になります。
総務省の手順書に掲載された実際の事例では、「ベンダーFが移行困難」となったケースで、他のベンダー(A〜E・G)が令和8年1〜3月に予定通り移行し、ベンダーFの担当業務のみ後続移行となる「段階移行」で対応している市の事例が紹介されています(総務省、000966925.pdf)。
このケースで重要だったのは、ベンダーF以外のシステムとの「連携調整」です。ベンダーAが連携に使用するオブジェクトストレージに関する調整の主体となり、連携先ベンダーの開発スケジュールに柔軟に対応する「2種類の連携機能」を準備しています。
これは、単一ベンダーの問題が複数業務の連携に波及するリスクを示す事例であり、ベンダー撤退が発覚した際は担当業務の単独問題として扱わず、周辺業務との連携への影響を必ず確認することが求められます。
Q. ベンダー撤退が確定したらすぐに特定移行支援申請が必要ですか?
A. 申請は「自治体の責めによらない理由で移行が困難」な場合に受理されます。ベンダーが標準準拠システムを開発しないという通知を書面で受領した段階で、申請の条件を満たす可能性が高くなります。デジタル庁・総務省の自治体支援窓口に早期に相談することが推奨されています。
Q. 次期ベンダーが見つからない場合、どうすればよいですか?
A. デジタル庁の「事業者撤退等自治体への情報提供スキーム」を活用し、複数の候補事業者情報を入手します。それでも見つからない場合は、近隣自治体との共同調達・共同利用方式(クラウド共同利用)を検討することが選択肢の一つです。gcinsight.jp の共同利用情報で近隣自治体の移行状況も確認できます。
Q. ベンダーが撤退を通告してきた後も現行システムの保守は継続されますか?
A. 「ベンダーが標準準拠システムを開発しない」という通告は、現行システムの保守終了を即座に意味するものではありません。ただし保守継続の条件(費用・期限)は再交渉が必要になるケースが多く、書面による確認が不可欠です。
Q. 上司への説明で「ベンダー撤退なら国が面倒を見るはず」と言われたらどう対応しますか?
A. 特定移行支援制度は「財政支援の延長」であり「国がシステム移行を代わりに実施する」制度ではありません。移行作業の主体は依然として自治体であり、次期ベンダー選定・データ移行準備・庁内調整はすべて自治体側の業務として残ります。
現時点でベンダー撤退リスクが浮上している自治体の情報システム担当者は、以下を優先的に実施してください。
2026年度以降の移行完了を目指す自治体にとって、ベンダー撤退への初動対応の速さが最終的なコストと移行品質を大きく左右します。gcinsight.jp では最新の自治体別移行状況と特定移行支援システムの認定状況をデータで提供しています。
参考文献・出典
GCInsight編集部
ガバメントクラウド・自治体標準化を専門に調査するリサーチチーム。デジタル庁・総務省公表データを一次資料として継続的に分析し、自治体DX担当者・ITベンダー向けに実務情報を提供しています。
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