
デジタル庁の適合確認試験合格製品(2026年3月末時点)を基に、自治体システム標準化ベンダー一覧を整理。20業務別の対応状況と主要事業者の特徴を解説します。ベンダー選定に活用できる情報をGCInsightが提供します。
令和8年(2026年)3月末時点で、標準化の対象となる全34,592システムのうち13,283システム(38.4%)が標準準拠システムへの移行を完了しています(総務省 標準化PMOツール、令和8年1月末時点)。
一方、移行を完了していない自治体にとって、今後の最大の選択肢はベンダーの確定です。しかし、標準準拠システムを提供するベンダーは多数存在し、どの事業者が自治体の業務に対応しているかを正確に把握することは容易ではありません。
自治体が標準準拠システムのベンダーを選定する際に最も確実な基準となるのが、デジタル庁が実施する「適合確認試験」への合格実績です。この試験は、各ベンダーが開発した標準準拠システムが、データ要件・連携要件に関する標準化基準に適合しているかを検証するものです。本記事では、公式の合格製品情報を基に、主要事業者の対応状況を業務別に整理します。
「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)に基づき、以下の20業務が標準化の対象となっています(デジタル庁 令和7年2月公表資料より)。
| 分野 | 対象業務 |
|---|---|
| 住民・戸籍 | 住民基本台帳、印鑑登録、戸籍、戸籍附票 |
| 選挙 | 選挙人名簿管理、期日前・不在者投票管理、当日投票管理、在外選挙管理 |
| 税務 | 個人住民税、法人住民税、固定資産税、軽自動車税、地方税(共通) |
| 福祉・医療 | 障害者福祉、介護保険、国民健康保険、後期高齢者医療、生活保護 |
| 子ども・教育 | 児童手当、子ども・子育て支援、就学援助、健康管理、児童扶養手当 |
| 年金 | 国民年金 |
各業務は個別に標準仕様書が策定されており、ベンダーは業務ごとに適合確認試験を受験します。そのため、同一ベンダーでも業務によって対応状況が異なります。自治体が選定するうえでは、業務単位でのベンダー対応状況を確認することが重要です。
デジタル庁の適合確認試験合格製品一覧(2026年3月末時点)に基づき、主要事業者の対応状況をまとめました。
株式会社日立システムズ(製品名: ADWORLD住民情報)は、住民基本台帳・印鑑登録・選挙・税務・児童扶養手当・国民年金・児童手当・子ども・子育て支援など17業務以上をカバーする広域対応製品です。2026年2月27日付で一般市・指定都市双方の区分で合格を取得しています。
株式会社ジーシーシー(製品名: e-SUITEv2)は、住民基本台帳・印鑑登録・選挙・税務・障害者福祉・介護保険・国民健康保険・後期高齢者医療・国民年金・児童扶養手当・子ども・子育て支援など20業務のほぼ全域に対応し、2024年7月1日に合格を取得しています。
株式会社RKKCS(製品名: 総合行政システム)は、選挙・国民年金・児童扶養手当・学齢簿編製・子ども・子育て支援などに対応。2026年3月26日付の最新合格で、統合収納管理・滞納管理機能も追加されています。
行政システム株式会社(製品名: Probono住民情報、Probono選挙)は住民情報と選挙業務に特化した製品を提供しています。
以下の事業者は特定業務に特化しつつ、当該分野での実績を積み上げています。
| 事業者名 | 製品名 | 特化分野 | 合格日 |
|---|---|---|---|
| 株式会社両毛システムズ | Civic-Station戸籍情報総合システム | 戸籍・戸籍附票・人口動態・火葬等 | 2026/2/27 |
| 株式会社両備システムズ | R-STAGE福祉情報システム | 障害者福祉・児童扶養手当・子ども・子育て支援 | 2025/1/29 |
| テクノコーポレーション株式会社 | テクノ健康管理システム | 健康管理 | — |
| 株式会社ワイイーシーソリューションズ | Seagull-LC すくすく | 就学援助 | 2026/1/28 |
| 四国情報管理センター株式会社 | LOGHEALTH | 健康管理 | 2025/8/5 |
| 株式会社リードコナン | 税務LAN法人住民税システム | 法人住民税・収納管理 | 2026/3/31 |
TKC(TASKクラウドサービス)は対象20業務の標準仕様対応システムを開発しており、2025年9月末時点で全国68団体が標準仕様に対応した基幹業務システムをガバメントクラウド上で稼働中です(TKC ニュースリリース、2025年10月)。TASKクラウドは「デジタル庁が推奨する共同利用方式(マルチテナント方式)」を採用しており、小規模自治体のコスト削減に有効な方式として注目されています。
株式会社NTTデータ関西は政令市向けに特化した「政令市版住記印鑑標準準拠システム」で2025年10月3日付の合格を取得。指定都市区分での住民基本台帳・印鑑登録業務に対応しています。
20業務は分野ごとにベンダーの対応体制が異なります。下図は業務分野と主要ベンダーの関係を示しています。
flowchart TD
A[標準化対象20業務]
A --> B[住民・戸籍系<br>住民基本台帳/印鑑/戸籍]
A --> C[税務系<br>住民税/固定資産税/軽自動車]
A --> D[福祉・医療系<br>介護/障害者/国保/後期高齢]
A --> E[子ども・教育系<br>児童手当/就学援助/健康管理]
B --> F[総合型ベンダー<br>日立システムズ/GCC/RKKCS等]
C --> F
D --> G[特化型ベンダー<br>両備/四国情報管理/YEC等]
E --> G
この構造が示すように、住民・戸籍と税務は複数の総合型ベンダーが幅広く対応しているのに対し、福祉・医療や子ども・教育系の一部業務は特定ベンダーへの集中が見られます。ベンダー選定では、自治体が利用する業務の組み合わせに合わせて、単一ベンダーで網羅できるかを確認することが重要な判断軸になります。
適合確認試験の合格区分は「指定都市」「一般市」「町村」等に分かれており、同一ベンダー・同一製品でも区分ごとに別途合格が必要です。たとえば日立システムズのADWORLD住民情報は一般市と指定都市の双方で合格を取得していますが、すべての製品がそうではありません。自治体の規模に応じた区分での合格実績を必ず確認してください。
単一ベンダーで複数業務を賄う「ワンストップ型」と、業務ごとに最適なベンダーを組み合わせる「マルチベンダー型」の2つの選択肢があります。マルチベンダー型は各業務での最適製品を選べる反面、ベンダー間のデータ連携・インターフェース設計にコストがかかります。
GCInsight の標準化業務マップ(/packages)では、業務別のベンダー対応状況を確認できます。
令和8年1月末時点で、全34,592システムのうち8,956システム(25.9%)が「特定移行支援システム」に該当する見込みとなっています(デジタル庁 令和8年2月27日公表資料)。特定移行支援システムとは、標準化に向けた移行が著しく困難なシステムとして総務省が把握・公表するものです。自治体が選定するベンダーが過去に特定移行支援システムに関係していないか、移行計画の信頼性も確認することが必要です。
「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」は、単にシステムを標準化するだけでなく、「他ベンダーへの移行をいつでも可能とすることにより競争環境を適切に確保する」ことを明示しています(デジタル庁 令和4年4月加筆版資料)。
標準準拠システムへの移行後は、ベンダーロックインが解消され、データ互換性が担保されます。これは、現在利用しているベンダーのサービス水準や価格に不満がある場合、移行先の選択肢が広がることを意味します。
flowchart LR
A[現行システム<br>バラバラ仕様] --> B[標準準拠システム<br>統一データ形式]
B --> C1[ベンダーA]
B --> C2[ベンダーB]
B --> C3[ベンダーC]
ベンダー間のデータ互換性が確保された標準準拠システムの世界では、自治体はコスト・機能・サポート体制を比較しながら、継続的にベンダーを評価する立場に立てます。これが標準化推進の重要な成果の一つです。
総務省の標準化PMOツールによると、令和7年12月末時点での業務別移行完了システム数は以下のとおりです(総務省 令和8年2月27日公表資料)。
| 業務名 | 移行完了システム数 |
|---|---|
| 住民記録 | 567システム |
| 印鑑登録 | 563システム |
| 選挙人名簿管理 | 494システム |
| 個人住民税 | 526システム |
| 法人住民税 | 487システム |
| 固定資産税 | 515システム |
| 軽自動車税 | 526システム |
| 国民年金 | 516システム |
| 国民健康保険 | 474システム |
| 後期高齢者医療 | 462システム |
| 介護保険 | 418システム |
| 障害者福祉 | 443システム |
| 生活保護 | 324システム |
| 健康管理 | 489システム |
| 児童手当 | 440システム |
| 就学 | 373システム |
| 児童扶養手当 | 212システム |
| 子ども・子育て支援 | 427システム |
| 戸籍 | 184システム |
| 戸籍附票 | 154システム |
| 合計 | 8,594システム |
住民記録・税務系では移行が比較的進んでいる一方、戸籍(184システム)・戸籍附票(154システム)・児童扶養手当(212システム)・生活保護(324システム)は相対的に遅延が目立ちます。戸籍システムは専門性が高く対応ベンダーが限られるため、選定と移行に時間を要する傾向があります。
Q1. ベンダーが「標準準拠対応済み」と言っているが、何を確認すればよいか?
A. 「適合確認試験に合格しているか」を最初に確認してください。デジタル庁の適合確認試験合格製品一覧に事業者名・製品名・合格日が公開されています。合格なしに「準拠」を名乗ることは可能なため、自治体での調達仕様に「適合確認試験合格製品であること」を明記することが推奨されます。
Q2. 複数ベンダーに分けてよいか、一社にまとめるべきか?
A. どちらにも合理的な選択肢です。総合型ベンダー(日立システムズ・RKKCS・GCC等)は複数業務を一社でカバーできるため、調整コストを抑えられます。一方、特定業務(健康管理・就学援助等)では特化型ベンダーが機能面で優れるケースがあります。重要なのは、標準準拠システム間のデータ連携がAPI経由で標準化されているため、マルチベンダー構成でもデータ互換性が確保される点です。
Q3. 移行期限(2026年3月末)を過ぎた後も移行は続けられるか?
A. はい。令和5年(2023年)4月から令和8年(2026年)3月までが「移行支援期間」と位置付けられていますが、期限後も国の支援のもとで移行を継続できます。令和8年度(2026年度)以降は、移行支援の枠組みが「特定移行支援システム」への重点対応に絞られます。移行が遅れている自治体は、総務省の個別相談窓口や都道府県連絡会議を通じた支援を活用することが推奨されます(総務省 移行状況・特定移行支援システム資料)。
Q4. ベンダーの変更に際してデータ移行コストはどのくらいかかるか?
A. 標準準拠システム間の移行であれば、データ形式が標準化されているため従来より大幅に低減されます。ただし、個別カスタマイズ部分や標準化対象外の連携システム(「標準準拠アプリ以外のアプリ」)との接続改修は別途費用が発生します。GCInsight のコスト情報ページ(/costs)では自治体規模別のコスト傾向データを確認できます。
ベンダー選定は「適合確認試験合格実績」「業務カバー範囲」「自治体区分対応」の3点を軸に絞り込み、複数事業者へのRFI(情報提供依頼)を通じて比較検討することが現実的なアプローチです。
GCInsight(gcinsight.jp)では、標準準拠システムの移行進捗データや業務別の対応状況を自治体・ベンダー・クラウド別に確認できます。ベンダー選定の参考情報として、GCInsight のパッケージ・製品一覧(/packages)やリスク情報(/risks)もあわせてご参照ください。
GCInsight編集部
ガバメントクラウド・自治体標準化を専門に調査するリサーチチーム。デジタル庁・総務省公表データを一次資料として継続的に分析し、自治体DX担当者・ITベンダー向けに実務情報を提供しています。
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