
2026年3月27日、さくらのクラウドがデジタル庁の全305項目の技術要件をクリアし正式認定。外資4社独占が崩れた背景、条件付き採択から2年4か月の開発軌跡、そして自治体担当者がさくらを選ぶ際に確認すべき実務ポイントを一次資料で徹底解説します。
2026年3月27日、デジタル庁はさくらインターネット株式会社が提供する「さくらのクラウド」について、「すべての技術要件を満たしたことを確認できたので、2026年3月27日以降本番環境の提供が可能となります」と公式に発表しました(出典: デジタル庁「ガバメントクラウド」)。
これにより、2023年11月に「2025年度末(2026年3月)までに全要件を満たすことを条件」に採択されてから約2年4か月越しで、さくらのクラウドは正式なガバメントクラウドCSP(クラウドサービスプロバイダー)としての地位を確立しました。
この認定が持つ意味は単純ではありません。 外資4社が2020〜2022年度から採択済みであるのに対し、日本企業として初めてガバメントクラウドの要件を満たすことは、国内クラウド産業の技術水準を証明すると同時に、1,700を超える自治体に「国産クラウドという選択肢」を提供することを意味します。
この記事では、認定プロセスの全記録と、自治体担当者が実際にさくらのクラウドを選定する際に知っておくべき実務情報を公式資料に基づいて解説します。
さくらのクラウドは2023年度の公募に応募し、「2025年度末までに必要な全技術要件を満たすとする提案があり、デジタル庁としても計画も含めた提案の妥当性を確認できた」として、条件付きで採択されました(出典: デジタル庁「令和5年度新規募集分 ガバメントクラウドの対象となるクラウドサービスの公募結果について」)。
条件付き採択とは、正式採択ではなく「期限までに要件を満たせばガバメントクラウドとして使用可能」とする暫定的な地位です。この期間中、デジタル庁は四半期ごとに開発進捗を公表し続けました。
flowchart TD
A["2023年11月28日\n条件付き採択決定\n(令和5年度公募)"] --> B["2024年4月〜\n技術要件対応開発開始\n定期的な進捗公表"]
B --> C["2025年9月末\n進捗確認①\n計画通り進捗を確認"]
C --> D["2025年12月末\n進捗確認②\n一部要件の計画見直しを確認\n(全体計画への影響なし)"]
D --> E["2026年1月30日\n2025年度末完了計画を公表"]
E --> F["2026年3月27日\n全305項目クリア確認\n正式採択・本番環境提供開始"]
特筆すべきは、2025年12月末の進捗確認において「計画の見直しがなされた開発項目があることを確認したが、開発計画全体には影響なく、開発完了に向け随時進捗状況の確認を行っていく」と発表した点です(出典: デジタル庁「さくらのクラウドの開発計画の進捗状況について」)。
一部要件の遅延リスクを乗り越え、最終的に期限内に全要件をクリアした形となりました。
ガバメントクラウドへの採択に必要な技術要件は305項目に及びます。この数字だけではイメージしにくいですが、外資系クラウドが10年以上かけて整備してきたインフラと同等水準が求められます。
以下は主要カテゴリと、さくらがとくに対応に取り組んだとされる要件です(出典: デジタル庁「技術要件詳細新旧対照表」)。
| 要件カテゴリ | 具体的な要件例 | 国産クラウドとしての難易度 |
|---|---|---|
| ISMAP登録 | 政府情報システムのセキュリティ評価制度への登録 | 必須・事前準備が必要 |
| 運用実績 | 日本国内で3年以上の自社DC運営・利用団体100社以上 | さくらは満たしていた |
| 複数リージョン | 活断層等を考慮した地理的に離れた国内複数拠点 | 設備投資が必要 |
| データ保管 | 情報資産は日本国内に保管(利用者指示がない限り) | さくらは国内DCのみで有利 |
| HSM対応 | 暗号鍵の生成・保管・使用をHSMで管理 | 専用ハードウェア調達が必要 |
| 認証取得 | ISO/IEC27017・27018・AICPA SOC2等の第三者認証 | 監査・取得に数年単位 |
| クラウドネイティブ機能 | コンテナ・Kubernetes・サーバーレス等の現代的機能 | 機能追加・開発が必要 |
注目すべきはデータ保管要件です。外資クラウドは海外にデータが転送されるリスクへの懸念から特別な対応が求められますが、さくらのクラウドは設立当初から国内DCのみで運営しており、この点では構造的に有利でした。
一方で難易度が高かったのは、クラウドネイティブ機能の拡充です。コンテナ管理(Kubernetes対応)やサーバーレス環境など、AWSやGoogle Cloudが標準で提供してきた機能を2年4か月で整備したことが、今回の正式認定の核心です。
2026年3月27日以降、ガバメントクラウドのCSPは以下の5社体制となりました(出典: デジタル庁「ガバメントクラウド対象クラウドサービスの決定」)。
| クラウドサービス | 事業者 | 区分 | ガバクラ開始 |
|---|---|---|---|
| Amazon Web Services | Amazon Web Services, Inc. | 外資 | 令和2年度 |
| Google Cloud | Google LLC | 外資 | 令和2年度 |
| Microsoft Azure | Microsoft Corporation | 外資 | 令和2年度 |
| Oracle Cloud Infrastructure | 日本オラクル株式会社 | 外資 | 令和4年度 |
| さくらのクラウド | さくらインターネット株式会社 | 国産 | 令和5年度(2026年3月正式) |
松本尚デジタル相は2026年3月27日の閣議後会見で「国外も国内も含めて競争を促すという点では、日本の企業が入っている方がより一層競争が助長され、サービスが良くなる効果がある」と述べました(出典: 朝日新聞「ガバメントクラウド、日本企業で初の正式採用 さくらインターネット」)。
自治体担当者の視点では、さくらの参入によって以下の変化が生まれます。
価格競争の促進: 外資4社のみだった状況から国産クラウドが加わることで、CSP間の競争が促され、長期的に価格水準の適正化が期待されます。
調達交渉の変化: デジタル庁がCSPとの交渉を一括で担いますが、選択肢が増えることで交渉力が向上します。
国産データ主権の強化: さくらは日本国内のデータセンターのみで運営されており、データの国外流出リスクに対してより直接的な担保を提供します。
さくらのクラウドが正式認定されたとはいえ、自治体担当者が即座に「さくらを選ぶ」判断をするには、いくつかの実務上の確認事項があります。
ガバメントクラウドはCSPが提供するインフラ層であり、その上で動く「標準準拠システム(パッケージ)」はベンダーが提供します。自治体が利用する住民記録・税務・国保等20業務のパッケージが、さくらのクラウド上で動作するかどうかを確認する必要があります。
現時点では、AWSやGoogle Cloud上での稼働実績を持つパッケージが多く、さくらのクラウド対応を明示しているベンダーはまだ限られています。GCInsightのパッケージ一覧(/packages)で各ベンダーの対応状況を確認できます。
デジタル庁はガバメントクラウド利用支援システム(GCAS)で、CSP別の技術ガイドを公開しています。さくらのクラウド向けガイドは以下で参照できます(出典: ガバメントクラウド さくらのクラウド技術ガイド)。
このガイドには、さくらのクラウドの構成例・推奨アーキテクチャ・マネージドサービス一覧が記載されており、移行計画の策定時に必須の参考資料となります。
2026年度から本格運用が始まるガバメントクラウド接続において、共同利用方式を採用する場合は「どの共同利用主体がさくらのクラウドに対応しているか」を確認する必要があります。共同利用と単独利用の違いについてはコスト・方式比較ページ(/costs)を参照してください。
自治体がガバメントクラウドを利用するには、第五次LGWAN(2024年10月運用開始)を通じた接続回線の手配が必要です。さくらのクラウドへの接続もこのLGWAN経由となりますが、CSP固有の追加設定が必要な場合があるため、事前に接続サービス事業者と確認してください。
さくらのクラウドが正式認定されたことで、「国産 vs 外資」の選択が現実的になりました。以下は主な比較軸です。
| 比較軸 | さくらのクラウド | 外資4社(特にAWS) |
|---|---|---|
| データ主権 | 国内DCのみ・法的な国外転送リスクが低い | 日本リージョンあり、ただし親会社は米国法人 |
| 機能成熟度 | 2023年以降急拡充・外資比で機能数は少ない | 数百〜数千のマネージドサービス |
| ベンダー支援体制 | 日本語対応が前提・国内担当者が対応 | 日本法人あり・ただし英語ドキュメントが主体の機能も |
| パッケージ対応実績 | 2026年現在は稼働実績を積み上げ中 | 複数の主要パッケージベンダーが対応表明済み |
| 価格体系 | 今後の実績蓄積により変動の可能性あり | 円安の影響を受ける(ドル建て) |
| 経済安保の観点 | 国産CSPとして政策的な後押しを受けやすい | 外資規制強化のリスクを長期的に考慮が必要 |
重要なのは「どちらが優れているか」ではなく、自治体の規模・採用するパッケージ・移行スケジュールに応じた適切な選択をすることです。
たとえば、移行済みパッケージベンダーがAWSのみ対応している場合はAWSを選ぶ方が安全です。一方、新規調達でベンダーがさくら対応を表明しているなら、データ主権の観点からさくらを検討する価値があります。
さくらのクラウドがガバメントクラウドとして提供するサービスは、GCASガイド(https://guide.gcas.cloud.go.jp/sakura/)に詳細が記載されています。
主なサービスカテゴリは以下の通りです。
外資クラウドと比較すると、マネージドサービスの種類はまだ限定的ですが、自治体が必要とする基本的な標準準拠システムの稼働に必要な機能は整備されています。
自治体の現場では「ガバメントクラウドの認定を受けたさくら」という表現がよく使われますが、デジタル庁の公式用語では「採択」が正確です。以下に用語を整理します。
| 用語 | 意味 | 正確性 |
|---|---|---|
| 認定 | 資格・基準を満たすと第三者が確認すること | 一般的に使われるが非公式 |
| 採択 | デジタル庁が対象クラウドサービスとして選定すること | 公式用語 |
| 選定 | 採択とほぼ同義で使われることが多い | 公式文書でも使用される |
| ガバクラ対応 | ガバメントクラウドとして使えること | 実務的な表現 |
検索上位では「認定」という表現が多く使われるため(ロードマップの「さくらインターネット ガバメントクラウド 認定」KW含む)、本記事でも実態に即した表現として「認定」を使用しています。
正式認定から間もない2026年4月時点では、さくらのクラウドのガバメントクラウドとしての本格活用はまだ始まったばかりです。今後の注目ポイントを3つ挙げます。
1. パッケージベンダーの対応拡大
主要なパッケージベンダー(富士通・NEC・日立等)がさくらのクラウド上での稼働テストを進めており、対応製品数が増えるにつれて自治体の選択肢が広がります。2026年度末〜2027年度にかけての動向に注目です。
2. 令和8年度公募への継続応募
デジタル庁は令和8年度向けの公募も実施しており、さくらのクラウドが継続採択されることで長期的な安定利用が可能になります。5年の長期契約が基本設計のため、一度選定した自治体には継続性のメリットがあります(出典: デジタル庁「令和8年度調達仕様書」)。
3. 生成AI環境の整備
令和8年度の調達仕様書には「生成AIを初めとするAI関連サービスもガバナンスの範囲内で利用できるようにする」との方針が明記されています(出典: デジタル庁「調達仕様書 令和8年度募集」)。さくらのクラウドがこの領域でどのようなサービスを提供するかは、今後の大きな注目点です。
Q1: さくらのクラウドはすでに使えますか?
はい。2026年3月27日以降、本番環境としての利用が可能です。ただし、利用するためにはガバメントクラウドの標準的な接続手順(LGWAN接続・管理者アカウント設定等)が必要です。
Q2: パッケージベンダーはさくらに対応していますか?
対応状況はベンダーによって異なります。現時点では外資クラウド(特にAWS・Google Cloud)への対応が先行しており、さくら対応は拡大中です。調達予定のパッケージベンダーに直接確認することをお勧めします。GCInsightのパッケージ一覧(/packages)でも確認できます。
Q3: 条件付き採択の期間に使用していた自治体はありますか?
条件付き採択期間(2023年11月〜2026年3月)中は「全要件を満たした後にサービス提供開始」という条件だったため、正式なガバメントクラウドとしての運用はできませんでした。実際の運用開始は2026年3月27日以降です。
Q4: さくらのクラウドを選ぶと費用はどう変わりますか?
ガバメントクラウドの利用料はデジタル庁がCSPと一括交渉するため、自治体が個別に交渉する必要はありません。さくらのクラウドの具体的な料金体系はGCASの利用ガイドに記載されています。コスト比較についてはGCInsightのコスト効果ページ(/costs)も参照してください。
Q5: 国産クラウドを選ぶことに政策的なメリットはありますか?
経済安全保障の観点から、国産クラウドの利用を推奨する政策的動きがあります。また、デジタル大臣が「国内外の競争促進」と明言しているように、長期的に見て選択肢を国内企業に広げることは政策の方向性と一致しています。ただし、現時点では「さくらを選ぶと補助金が増える」等の直接的なインセンティブはありません。
2023年11月の条件付き採択から2年4か月、さくらのクラウドは305項目の技術要件をすべてクリアし、2026年3月27日に正式なガバメントクラウドCSPとなりました。これは日本のクラウド産業において歴史的な出来事であり、1,700を超える自治体に国産クラウドという新たな選択肢をもたらしました。
自治体担当者にとって重要なのは、「さくらが認定された」という事実だけでなく、採用予定のパッケージベンダーが対応しているか・接続環境の準備ができているか・移行スケジュールと整合しているかを具体的に確認することです。
GCInsightでは、各自治体のガバメントクラウド移行進捗・パッケージ対応状況・コスト報告書をリアルタイムで公開しています。さくらのクラウドを含むCSP選定を検討中の自治体担当者は、GCInsightダッシュボード(gcinsight.jp)で最新データを確認してみてください。
本記事は以下の一次資料に基づいています。
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