全1,741自治体の最新移行状況を毎週お届け

総務省が2024年9月に公開した「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書 第4.0版」を徹底解説。推進体制の立ち上げからRFI・RFP・PIA完了まで13のSTEPを図解し、移行困難システム対応・取組事例の追加など最新改訂ポイントもまとめます。
「手順書があることは知っているが、どこから読めばよいかわからない」「第4.0版に改訂されたが、以前のバージョンから何が変わったのか把握できていない」——全国の自治体情報システム担当者から、そうした声が多く聞かれます。
自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書(総務省)は、令和3年(2021年)7月の第1.0版公開から4年間で4回改訂されてきた実践的な移行ガイドです。2024年9月に公開された第4.0版では、移行困難システムへの対応や先行自治体の取組事例が追加されており、これまでで最も現場に即した内容になっています。
この記事では、手順書第4.0版の全体像と13の作業STEPを整理し、情報システム担当者が移行計画に直接活用できる形でまとめます。
「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書」は、総務省が全国の地方公共団体向けに策定した移行実務ガイドです。令和3年(2021年)に施行された地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(標準化法)のもと、全国約1,788の地方公共団体が対象20業務のシステムをガバメントクラウド上の標準準拠システムへ移行するための具体的な作業順序を示したものです。
手順書が担う役割は3点です。
| バージョン | 公開日 | 主な追加・改訂内容 |
|---|---|---|
| 第1.0版 | 令和3年(2021年)7月7日 | 初版。STEPの基本骨格を策定 |
| 第2.0版 | 令和5年(2023年)1月20日 | 戸籍・戸籍附票・印鑑登録の3業務追加検討を反映。RFI/RFP記載例を充実 |
| 第3.0版 | 令和5年(2023年)9月29日 | 標準化基本方針改定(移行困難システムの別途期限設定)を反映 |
| 第4.0版 | 令和6年(2024年)9月 | 先行自治体の取組事例追加・移行困難システム対応の記載強化 |
(出典: 総務省 自治体情報システムの標準化・共通化)
📊 この記事の元データを毎週受け取る
総務省・デジタル庁公表データを GCInsight が要約して毎週お届け。3ヶ月で 51 自治体担当者が登録済み。
※登録は無料・解約はワンクリック
手順書が対象とするのは以下の20業務です(出典: 総務省・地方公共団体情報システム標準化基本方針)。
| 分類 | 対象業務 |
|---|---|
| 福祉・子育て | 児童手当、子ども・子育て支援、児童扶養手当、生活保護、障害者福祉 |
| 住民・戸籍 | 住民基本台帳、戸籍、戸籍の附票、印鑑登録、選挙人名簿管理 |
| 税務 | 固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税 |
| 保険・年金 | 国民健康保険、後期高齢者医療、国民年金、介護保険 |
| その他 | 就学、健康管理 |
原則として令和7年度(2025年度)末(2026年3月31日)が移行期限とされています。ただし、令和6年(2024年)12月に改定された地方公共団体情報システム標準化基本方針(総務省)では、開発ベンダーのリソース逼迫などにより移行が困難なシステムについては「特定移行支援システム」として国が2030年度末まで支援する仕組みが設けられました。2024年10月末時点では、全体の402団体・2,165システムが特定移行支援システムに該当するとされています(同方針)。
flowchart TD
A["STEP1\n推進体制の立ち上げ"] --> B["STEP2\n現行システムの概要調査"]
B --> C["STEP3\n標準仕様との比較分析\n(Fit&Gap)"]
C --> D["STEP4\n移行計画の作成"]
D --> E["STEP5\nRFI資料の作成・RFI実施"]
E --> F["STEP6\nRFI結果分析・移行計画詳細化"]
F --> G["STEP7\n予算要求"]
G --> H["STEP8\nRFP・ベンダ選定"]
H --> I["STEP9\n契約・スケジュール確定"]
I --> J["STEP10\nPIA(特定個人情報保護評価)"]
J --> K["STEP11\n移行・データ変換"]
K --> L["STEP12\n並行稼働・受入テスト"]
L --> M["STEP13\n本番稼働・運用開始"]
各STEPの概要は以下のとおりです。
標準化・共通化の取組について庁内の理解を深め、全庁的な推進体制を整備します。情報政策担当だけでなく、住民課・福祉課・税務課など業務担当課を巻き込んだ横断チームの設置が求められます。
手順書では、推進体制案の作成→関連部局との調整→担当者名簿の整備という順序が示されています。令和4年(2022年)11月1日時点で、この作業を「完了」とした団体は38.3%、「作業中」が13.7%と報告されており(総務省調査)、当時すでに半数近くが着手していた状況でした。
移行対象20業務のうち、自団体で稼働しているシステムの全体像を把握します。具体的には、システム名・ベンダ名・契約期間・利用機能の一覧と、他システムとの連携一覧(データ連携インターフェース一覧)の作成が作業項目です。
「共通の帳票を独自に改修している」「市独自の電子申請システムと住基システムが連携している」といった地域固有の状況を、この段階で網羅しておくことがSTEP3以降の精度を左右します。
現行システムの機能・帳票・業務フローと、デジタル庁・各省が策定した標準仕様書を照合します。「現行機能が標準仕様に含まれているか(Fit)」「含まれない独自機能は廃止・BPRで対応するか(Gap)」を業務ごとに整理し、標準仕様書対応表に記録します。
重要なポイントは、標準化後はカスタマイズが原則禁止であること(総務省・手順書)。そのため、現行システムで独自拡張している機能は「業務プロセスを標準に合わせる(BPR)」か「標準化対象外業務として別途整理する」かの判断が必要です。Fit&GapはFit率を上げるための分析ではなく、業務フローを標準に揃える契機として位置づけることが求められています。
STEP2・3の結果をもとに、移行スケジュール・役割分担・予算感の粗いシミュレーションを作成します。「現行ベンダのままシステム更新するAパターン」「競争入札でベンダを変更するBパターン」のどちらを選択するかによってRFI/RFPの要否も変わるため、この段階で方針を仮決定します。
RFI(Request for Information)は、ベンダ各社から「標準準拠システムへの対応状況・移行スケジュール・概算費用」について情報を収集するプロセスです。手順書にはRFI依頼文書のひな型が付属しており、自団体の要件に合わせて編集して使います。
RFI結果を受けてSTEP6で移行計画を詳細化します。「ベンダ側の開発リソースが2025年度に集中しており、早めに枠を確保しないと遅れる」という情報が得られた場合、STEP4の計画を修正する場面も多く発生します。
移行費用の積算と予算要求を行います。ガバメントクラウド移行に係る費用は「デジタル基盤改革支援基金」(約7,000億円規模・総務省)による補助対象であり、各都道府県を通じた申請手続きが必要です。基金の設置年限は2025年度末から5年をめどに延長する方向で検討されています(総務省発表)。
費用項目としては、初期導入費(データ移行・設定・テスト)、ガバメントクラウド利用料(AWS/GCP/Azure/OCIのいずれかへの従量課金)、運用保守費の3区分が基本となります。
RFP(Request for Proposal)では、RFI結果を踏まえた詳細な要件定義書をベンダに提示し、正式な提案書と見積もりを受領します。手順書はRFPを実施しない「Aパターン(現行ベンダ継続)」でのスキップも認めており、その場合はスケジュールを前倒しできる設計になっています。
Bパターン(競争入札)を選択した場合は、ベンダ選定基準の事前設定と評価委員会の設置が必要です。GCInsight パッケージ一覧では、各業務の標準準拠システムと対応ベンダを確認できます。
ベンダと仕様書・スケジュール・SLAを含む契約を締結します。この段階でガバメントクラウドのテナント設定やネットワーク構成(LGWAN-ASP接続かインターネット接続かの選択)も決定します。
個人番号(マイナンバー)を含むシステムを移行・変更する場合、特定個人情報保護評価(PIA)の実施が法律で義務付けられています。変更後のシステム構成・データフローを明記した評価書を作成し、個人情報保護委員会への届出を行います。
データ移行(既存DBから標準準拠システムのスキーマへの変換)、並行稼働(一定期間、旧システムと新システムを同時稼働させてデータ整合性を確認)、受入テスト(業務担当課によるシナリオテスト)を経て本番稼働へ移行します。
2024年9月に公開された第4.0版では、以下の改訂が加えられました(出典: 総務省 手順書第4.0版概要)。
1. 先行自治体の取組事例追加 すでに標準準拠システムへの移行を完了した団体における、推進体制・RFI実施方法・Fit&Gap分析の進め方などの具体的な事例が新章として追加されました。「他の団体がどのように進めたか」を参照できる実践情報が充実しています。
2. 移行困難システムへの対応記載の強化 2024年10月末時点で全体の402団体・2,165システムが特定移行支援システムに該当することを受け(総務省)、移行困難と判断された場合の国への届出プロセスや、2030年度末まで延長された支援スキームの活用方法が追記されました。
3. 手順書本体の記載整合 2023年の標準化基本方針改定や、デジタル庁のガバメントクラウド移行手順書との整合を図り、参照先文書・用語の統一が行われました。
自治体システム移行には「標準化・共通化手順書」(総務省)と「標準準拠システムのガバメントクラウド移行に係る手順書」(デジタル庁)という2種類の手順書があります。
| 比較項目 | 標準化・共通化手順書 | GC移行手順書 |
|---|---|---|
| 策定主体 | 総務省 | デジタル庁 |
| 対象 | 業務システムの標準化プロセス全体 | クラウドインフラへの技術的移行 |
| 作業範囲 | 推進体制〜本番稼働まで13STEP | テナント設定・ネットワーク構成・データ移行技術 |
| 主な読者 | 業務担当・情報政策担当 | インフラ担当・ベンダ技術者 |
| 最新版 | 第4.0版(2024年9月) | 第3.0版(2025年3月、デジタル庁) |
実務では、標準化・共通化手順書(STEPの流れ)を主軸にプロジェクト全体を管理しながら、技術的なクラウド設定はデジタル庁のGC移行手順書を参照するという使い分けが基本です。
手順書のSTEPは線形に見えますが、実際にはSTEP5(RFI)とSTEP7(予算要求)が並行するなど、複数作業が同時進行します。「手順書を1STEP終えたら次へ」という直線的な理解では、年度予算サイクルとの齟齬が生じるリスクがあります。
STEP3のFit&Gap分析は、情報システム担当だけでは完結しません。「現行の帳票が標準仕様に含まれるか」を判断するのは業務担当課であり、担当課が抵抗感を持つと分析が長期化します。経営層を巻き込んだBPRの判断権限の事前整理が、この段階での最大の課題です。
標準準拠システムへのカスタマイズは原則禁止ですが、「標準化対象外事務」として分類された機能は独自対応が可能です。境界線の解釈を早い段階でベンダと合意しておかないと、契約後に「この機能は対応できない」という問題が浮上します。APPLICの準拠登録製品一覧(APPLIC)で各製品の標準準拠範囲を事前確認することを推奨します。
手順書に明記されている作業項目は最低限の要件です。データ品質の問題(重複レコード・文字コード変換)や、住民サービス停止を避けるための移行タイミングの調整など、個別団体固有の課題は手順書の外側にあります。先行自治体の取組事例集(総務省・第2.0版)を参照し、同規模・同業務での事例を参考にすることが実務上は有効です。
Q. 手順書は全団体が必ず使わなければならないのですか?
A. 法律上、手順書の使用が義務付けられているわけではありません。ただし、総務省・都道府県による進捗確認ではSTEP番号が共通の確認軸として使われるため、手順書に沿って作業管理することで国・県との対話がスムーズになります。
Q. 既に移行が完了している業務の手順書の扱いは?
A. 移行完了済みの業務については、運用フェーズの確認(SLA遵守・障害対応手順・ガバメントクラウド利用料の把握)に引き続き活用できます。第4.0版では移行後の運用管理に関する記載も充実しています。
Q. RFIを実施するタイミングはいつが適切ですか?
A. 手順書(第4.0版)では、STEP4(移行計画作成)の完了後にRFIを実施することを推奨しています。移行計画の全体像が固まっていない状態でRFIを行うと、ベンダ回答の比較・分析が困難になります。早くても現行調査(STEP2)が完了した段階以降が望ましいとされています。
Q. 特定移行支援システムになる場合、手順書のどのSTEPで申請しますか?
A. 手順書第4.0版では、移行困難の判断はSTEP4(移行計画作成)またはSTEP6(RFI結果分析)の段階で行い、デジタル庁・総務省に状況を報告する流れが追記されました。判断基準はデジタル庁が示す「移行困難システムの要件」に照らして確認が必要です。
Q. 上司への説明で「なぜ第4.0版を使うべきか」を一言で言うと?
A. 先行自治体の実例と移行困難システムへの対応方針が追加されており、これまでで最も現場課題に近い内容になっています。第3.0版以前を参照している場合は、最新版への切り替えを推奨します。
自団体の標準化・共通化の進捗が手順書のどのSTEPにあるか、また対象業務ごとの移行状況を把握するには、GCInsight(gcinsight.jp)のダッシュボードで全国自治体の移行進捗データを確認できます。
移行スケジュールや遅延リスクのある自治体情報はGCInsight リスク一覧でも確認可能です。手順書の最新版(第4.0版)は総務省の公式ページから無料でダウンロードできます。
GCInsight編集部
ガバメントクラウド・自治体標準化を専門に調査するリサーチチーム。デジタル庁・総務省公表データを一次資料として継続的に分析し、自治体DX担当者・ITベンダー向けに実務情報を提供しています。
自治体IT担当者の方へ
移行進捗ダッシュボード — 1,788団体・34,592システムの最新データを毎日更新
GCInsight は自治体担当者向けに特化した移行進捗ダッシュボードを無料で公開しています。週1メールで最新動向を、または自治体ページで詳細データを確認できます。
無料ニュースレター — 毎週金曜
この記事の続報・関連データを見逃さない。週1・5分のガバクラ週報。
自治体システム標準化のベンダー選定でなぜ入札不調が続くのか。総務省手順書(第4.0版)が示すRFI〜RFP〜契約までの4フェーズと、標準準拠システムを提供する主要事業者の特徴・選定チェックリストを解説します。
2026-05-08総務省「自治体フロントヤード改革推進手順書」(令和7年5月)に基づき、書かない窓口・オンライン申請にとどまらない総合的改革の進め方を解説。2026年度末300自治体目標の現状と人口規模別モデル事例を紹介します。
2026-05-07デジタル庁が推進する地方公共団体情報システム標準化は「法律制定→標準仕様策定→ガバメントクラウド移行」の3段階で構成されます。20業務の対象一覧・移行スケジュール・GCASガイドのReplatformノウハウまで2026年最新情報で解説します。
2026-04-20T00:00:00.000Z