全1,741自治体の最新移行状況を毎週お届け

特定移行支援システムに認定されると移行期限が2025年度末→2030年度末まで5年延長。半年で2.4倍(935自治体)まで急増した認定状況を一覧で確認。認定基準・申請フロー・コスト影響をデジタル庁一次資料から解説。
ガバメントクラウドの基礎(仕組み・CSP5社・20業務)については「ガバメントクラウドとは?完全解説」を参照。
令和7年7月末の3,770システムから、わずか半年で8,956システムへ——2.4倍増。デジタル庁が2026年2月27日に公表した最新データは、特定移行支援システムの急増を鮮明に示している。全国1,788団体の52.3%にあたる935団体が、少なくとも1つの移行未完了システムを抱えている。民間企業に例えるなら、グループ会社の過半数が基幹ERPの更新期限に間に合わず、本社主導の延長プログラムに申請した状態だ。編集部は、この急増の主因をベンダーSEリソースの構造的不足と見ている。
あなたの自治体は、935団体のうちの1つか。そうでないなら、移行完了後の安定運用は確保できているか。
本記事では、特定移行支援システムの定義・認定基準・期限設計・コスト影響を、デジタル庁・総務省の一次資料に基づいて解説する。これは「移行失敗」の記録ではなく、国が制度として用意した正規ルートの全体像だ。
「特定移行支援システム」は、地方公共団体情報システム標準化基本方針(2024年12月改定)において明確に定義された制度上の区分です。
通常の移行支援期間(令和5年4月〜令和8年3月)内に標準準拠システムへの移行が完了しない見込みのシステムのうち、デジタル庁・総務省・制度所管省庁が把握・公表するものを指します。「把握・公表」が重要で、国が正式に移行遅延を認知した上で、積極的な支援対象として指定するものです。
「移行困難システム」との違いを整理しておきます。
| 区分 | 定義 | 期限 | 国の関与 |
|---|---|---|---|
| 特定移行支援システム | 期限内未完了見込み・国が把握・公表 | 主務省令で個別設定(概ね5年以内) | デジタル庁・総務省が積極支援 |
| 移行困難システム | 技術的理由等で移行自体が困難 | 経過措置として令和10年度(2028年度)末まで | 制度所管省庁が個別検討 |
特定移行支援システムは「遅延しているが移行可能なシステム」、移行困難システムは「技術的制約等で移行そのものが困難なシステム」という違いがあります。
flowchart TD
A[自治体が移行スケジュール報告] --> B{2025年度末までに
移行完了見込みか?}
B -->|完了見込み| C[標準準拠システムへ移行完了]
B -->|未完了見込み| D[特定移行支援システムに指定
国による個別期限設定・積極支援]
D --> E[指定期限内に移行完了]
style C fill:#4ade80,color:#000
style D fill:#fb923c,color:#000
style E fill:#4ade80,color:#000
デジタル庁・総務省・制度所管省庁は、自治体から把握した当該システムの状況および移行スケジュールも踏まえて、標準化基準を定める主務省令において所要の移行完了の期限を設定することとしており、「概ね5年以内に標準準拠システムへ移行できるよう積極的に支援する」とされています(出典: 地方公共団体情報システム標準化基本方針 2024年12月改定版)。
デジタル庁の公表データを時系列で追うと、特定移行支援システムの件数が急増していることがわかります。
| 公表時点 | システム数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 令和7年6月27日(令和7年4月末時点) | 3,279システム(公表値) | 約9.5% |
| 令和7年7月末(令和7年9月30日公表) | 3,770システム | 10.9% |
| 令和7年12月末(令和8年2月27日公表) | 8,956システム | 25.9% |
令和7年7月末から12月末の半年間で、3,770システムから8,956システムへと +5,186システム(約2.4倍) に急増しています。
デジタル庁はこの主な増加要因として、「移行作業が本格化する中で、移行作業やその直後の運用に想定以上のSEリソースが必要であることが判明したこと等により、事業者による移行スケジュールの大幅な見直しが行われたため」と説明しています(出典: デジタル庁「地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化の取組状況」2026年2月27日公表)。
令和7年9月30日公表のデジタル庁資料では、令和7年7月末時点における3,770システム・643団体の事由別内訳が明示されています(出典: デジタル庁「特定移行支援システムの該当見込み(令和7年7月末時点)」令和7年9月30日公表)。
| 事由 | 概要 | システム数 | 団体数 |
|---|---|---|---|
| 事由1 | 現行システムがメインフレームで運用されているもの | 45 | 7 |
| 事由2 | 現行システムが個別開発システムで運用されているもの | 196 | 31 |
| 事由3 | 現行事業者が標準準拠システムを開発しない・代替調達見込みが立たないもの | 184 | 98 |
| 事由4 | 事業者のリソース逼迫による開発・移行作業等の遅延の影響を受けるもの等 | 3,345 | 595 |
| 合計 | 3,770 | 643(重複排除) |
事由4(ベンダーSEリソース逼迫)が3,345システム・595団体を占め、全体の**88.7%**を構成しています。これは移行遅延の主因が技術的困難ではなく、産業構造上のキャパシティ問題であることを裏付けています。
令和7年12月末時点の最新データでは、以下の状況です。
すでに移行を完了したシステムが38.4%ある一方で、まだ移行が終わっていない団体が半数を超えるという二極化が進んでいます。
最大の要因は、ベンダーのSE(システムエンジニア)リソースの不足です。デジタル庁の公表資料では、「移行作業やその直後の運用に想定以上のSEリソースが必要であることが判明した」とされており、事業者が移行スケジュールを大幅に見直したことが件数急増につながっています。
全国1,741市区町村が同時期に標準準拠システムへの移行を進めるため、対応可能なベンダーのSEリソースが需要を大幅に超過しています。特に2025年度(令和7年度)後半に移行作業が集中したため、リソース不足が顕在化しました。
一部の自治体では、現行システムがメインフレームにより構成されており、「システムの全容把握からデータ移行をはじめとした標準準拠システムへの移行完了まで」に他システムより長期間を要することが指摘されています(出典: 地方公共団体情報システム標準化基本方針改定案 2024年12月19日)。
標準化基準への完全適合が困難な機能については、経過措置として以下の条件を満たす場合に限り、一時的な非適合が認められます。
(出典: 地方公共団体情報システム標準化基本方針 2024年12月19日改定案)
特定移行支援システムを抱える自治体は、追加的なコスト負担が発生する可能性があります。詳細な分析については特定移行支援でコストはどう変わるかをご参照ください。
主要なコスト増加要因として以下が挙げられます。
移行期間の延長による費用
システム間連携の複雑化
なお、国はクラウド利活用推進のための財政支援措置として、デジタル基盤改革支援補助金を用意しています。特定移行支援システムの認定を受けた自治体もこの補助金の対象となります。
2025年(令和7年)に地方公共団体情報システム機構法が改正され、デジタル基盤改革支援基金の設置年限が令和12年度末まで延長されました(出典: 総務省「自治体行政スマートプロジェクト 標準化・ガバメントクラウド関係」soumu.go.jp/main_content/001053408.pdf)。これにより特定移行支援システムを抱える自治体は、令和12年度末まで基金の活用が可能です。
一般的な報道では「移行遅延」として取り上げられることも多いですが、特定移行支援システムの認定を受けた自治体が、制度上「違反」や「失敗」の状態にあるわけではありません。
特定移行支援と「遅延」の違いで詳述していますが、制度上の整理は以下の通りです。
935団体が特定移行支援システムを保有しているという事実は、日本の自治体標準化が「失敗した」ことを意味するのではなく、国・自治体・ベンダーが現実的なスケジュールを再設計しているプロセスにあることを示しています。
デジタル庁は、特定移行支援システムを把握・公表する体制を整備しています。自団体の基幹業務システムが特定移行支援システムに認定されているかどうかは、デジタル庁の公表資料(「地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化の取組状況」)を参照するか、担当ベンダーに確認することで把握できます。
特定移行支援システムの認定を受けた場合、以下のアクションが求められます。
特定移行支援システムの認定は、制度上の正規ルートであることを議会・首長に正確に伝えることが重要です。「遅延=失敗」という誤解を避けるため、以下の点を説明資料に盛り込むことを推奨します。
特定移行支援の急増に対し、現場からは「やはり」という声と「想定以上」という声が混在している。
X上の自治体SE「Meteor」氏は「ガバクラは余剰な投資。軽自動車でよかった人にベンツを乗らせている」(いいね94件)と、そもそもの制度設計への根本的な疑問を呈している。935団体という数字を「移行の失敗」ではなく「制度の想定超過」と見る実務者は少なくない。
note.comの「標準化どうしましょう」氏は「コスト効率?何とどう比較して?安定性が最優先だよ」(いいね174件)と、特定移行支援の文脈でも安定稼働を最優先すべきという立場を示している。移行を急いで品質を落とすよりも、特定移行支援を活用して確実に進める方が合理的という現場判断だ。
複数の地場ベンダーからは「SEリソースが本当に足りない。1団体の移行に想定の1.5〜2倍の工数がかかっている」という声がX上で共有されている。
GCInsight編集部は、半年で2.4倍という急増ペースの背景に「移行作業の実工数が事前見積もりを大幅に超過した」という産業構造の問題があると分析する。デジタル庁の公表資料も「移行作業やその直後の運用に想定以上のSEリソースが必要であることが判明した」と認めている。これは個別自治体の問題ではなく、日本のSI業界全体のキャパシティと1,741自治体同時移行という政策設計のミスマッチだ。編集部としては、2026〜2028年度のSEリソース争奪がさらに激化する中、早期に移行計画を確定しベンダーとリソースを確保した自治体と、後回しにした自治体との間で移行コスト・品質の格差が決定的に開くと予測する。
特定移行支援システムの現状を整理します。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 対象団体数 | 935団体(全1,788団体の52.3%) | デジタル庁 2026年2月27日公表 |
| 対象システム数 | 8,956システム(全34,592の25.9%) | デジタル庁 2026年2月27日公表 |
| 移行完了済(令和8年1月末) | 13,283システム(38.4%) | デジタル庁 2026年2月27日公表 |
| 経過措置の最終期限 | 令和10年度(2028年度)末 | 標準化基本方針 2024年12月改定 |
| 特定移行支援の目標期限 | 認定から概ね5年以内 | 標準化基本方針 2024年12月改定 |
| 基金設置年限 | 令和12年度末まで | J-LIS法改正(2025年)総務省資料 |
制度上の区分を正しく理解し、自団体の状況を客観的に把握したうえで、都道府県・国との連携を強化することが、担当者に求められる対応です。
GCInsightでは全国の移行進捗状況およびクラウド・ベンダー別の詳細情報を継続的に更新しています。自団体の位置づけを把握する際のリファレンスとしてご活用ください。
デジタル庁「地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化の取組状況」(2026年2月27日公表)
地方公共団体情報システム標準化基本方針(2024年12月19日改定)
総務省「地方公共団体情報システム標準化基本方針」(令和6年度改定版)
内閣府経済財政諮問会議・規制改革WG資料「特定移行支援システムの把握・公表」
デジタル庁「標準化基本方針改定案(2024年12月19日)主な改定事項」
デジタル庁「特定移行支援システムの該当見込み(概要)(令和7年7月末時点)」(令和7年9月30日公表)
総務省「自治体行政スマートプロジェクト 標準化・ガバメントクラウド関係資料」(デジタル基盤改革支援基金 設置年限延長を含む)
GCInsight編集部
ガバメントクラウド・自治体標準化を専門に調査するリサーチチーム。デジタル庁・総務省公表データを一次資料として継続的に分析し、自治体DX担当者・ITベンダー向けに実務情報を提供しています。
無料ニュースレター — 毎週金曜
この記事の続報・関連データを見逃さない。週1・5分のガバクラ週報。
2023年11月の条件付き採択から2026年3月の正式採択まで、さくらインターネットはデジタル庁が定める305項目の技術要件を2年余りかけてクリアしました。四半期ごとの進捗発表・遅延発生・石狩第3ゾーン開設——国産クラウドが辿った軌跡と、自治体担当者が今確認すべきポイントを解説します。
2026-05-04デジタル庁が整備するガバメントクラウドの全体像を2026年最新情報で解説。5CSPが採択された経緯・305項目の技術要件・利用料体系・共同利用方式の仕組みまで、自治体IT担当者が実務で使える情報を一冊に。
2026-05-032025年6月13日に閣議決定されたデジタル社会の実現に向けた重点計画を自治体IT担当者向けに解説。ガバメントクラウド移行・標準化・2030年工程表など実務に直結するポイントをRAGデータで整理しました。
2026-05-02