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2025年6月13日に閣議決定されたデジタル社会の実現に向けた重点計画を自治体IT担当者向けに解説。ガバメントクラウド移行・標準化・2030年工程表など実務に直結するポイントをRAGデータで整理しました。
「デジタル庁が重点計画を決定した」というニュースを見ても、担当者として何を優先すべきか判断に迷うケースが報告されています。重点計画はガバメントクラウド移行・標準化・マイナンバー活用など多岐にわたり、自治体の実務担当者には「自分の自治体に今何が求められているか」を把握することが最初の壁になっています。
この記事では、2025年6月13日に閣議決定された最新の重点計画を中心に、2021年の計画策定から現在までの変遷と、自治体情報システム担当者が押さえるべき実務ポイントを整理します。
重点計画の正式名称は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」です。デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35号)第37条第2項等に基づき、デジタル庁が策定・閣議決定する、政府全体のデジタル施策の工程表・方針書に当たります。
重点計画には以下の3つの計画を一体化した位置づけがあります。
| 根拠法 | 計画名 |
|---|---|
| デジタル社会形成基本法 第37条第1項 | デジタル社会形成のための重点計画 |
| デジ手法第4条第1項(情報通信技術活用推進法) | 情報システム整備計画 |
| 官民データ活用推進基本法 第8条第1項 | 官民データ活用推進基本計画 |
3法の計画を一本化することで、国・地方公共団体・民間を横断した施策が一枚の地図として可視化されます。
デジタル庁が公表した重点計画の概要資料によると、計画の性格は「デジタル庁のみならず各府省庁の取組も包含し、工程表とスケジュールを明らかにするもの」と定義されています。つまり、デジタル庁だけが動く計画ではなく、総務省・厚生労働省・文部科学省など関係省庁全体の施策進捗管理ツールです。
重点計画はデジタル庁発足(2021年9月)後から現在までに複数回改定されてきました。以下の経緯を把握しておくことで、2025年版の意義が明確になります。
flowchart TD
A["2021年12月24日\n重点計画(第1版)\nデジタル庁発足後初"] --> B["2022年6月7日\n重点計画(改定)\nWeb3.0・DX全分野拡張"]
B --> C["2023年6月9日\n重点計画(改定)\nマイナカード一体化強化"]
C --> D["2024年6月21日\n重点計画(改定)\nAI活用・デジタル田園都市"]
D --> E["2025年6月13日\n重点計画(現行版・閣議決定)\nデジタル庁2.0・AI最大活用"]
デジタル庁が公表した資料(2024年6月21日版概要)によると、計画の構造は「第1 はじめに」から始まり「第7 今後の推進体制」まで7章構成が維持されています。一方で2025年版では「デジタル庁2.0」と称する組織変革が新たに盛り込まれ、AI・量子・データ活用の比重が大きく増加しました。
2021年版が示した基本方針の核心は「令和7年度(2025年度)末を移行期限とした地方公共団体の基幹業務システム統一・標準化」です。重点計画(2021年12月24日閣議決定)概要に明記されています。この2025年度末という期限は2022年・2023年・2024年版でも維持され、2025年6月版においても基本方針として継続しています。
2025年6月13日に閣議決定された最新の重点計画では、以下の分野が重点施策として位置づけられています。
| 分野 | 主要施策の方向性 |
|---|---|
| マイナンバーカード・デジタル行政サービス | 健康保険証との一体化・スマートフォン搭載・次期カードへの移行 |
| アナログ規制の横断的見直し | 書面・押印・対面の継続的見直しとデジタル完結 |
| 国・地方のDX推進 | 地方公共団体の基幹業務システム統一・標準化、ガバメントクラウド移行 |
| データ連携基盤整備 | 公共サービスメッシュ・ベースレジストリの整備拡充 |
| 準公共サービスの拡充 | 医療・教育・防災分野のデジタル化推進 |
| デジタル庁2.0(AI・データ最大活用) | 生成AI活用指針の整備・AIを活用したEBPM推進 |
自治体IT担当者にとって直接関係するのは「国・地方のDX推進」分野であり、具体的にはガバメントクラウドへの基幹業務システム移行が中心となります。
重点計画(令和4年6月7日閣議決定)(抄)では、自治体の基幹業務システム統一・標準化の法的根拠と目標が次のように明示されています。
「基幹業務システムを利用する原則全ての地方公共団体が、目標時期である令和7年度(2025年度)までに、ガバメントクラウド上に構築された標準準拠システムへ移行できるよう、その環境を整備することとし、その取組に当たっては、地方公共団体の意見を丁寧に聴いて進める」
標準化の対象は以下20業務です。
地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第40号)はこれらの業務について、自治体が標準化基準に適合したシステムを利用することを義務づけています。
総務省が公表した標準化・ガバメントクラウド移行の概要資料(2026年2月13日・地方財政審議会提出)によると、ガバメントクラウドへの移行により期待される効果は以下のとおりです。
特に運用経費については、重点計画(令和3年6月18日閣議決定)(抄)で「平成30年度(2018年度)比で少なくとも3割の削減を目指す」という数値目標が設定されています。
2025年度末という移行期限に間に合わないシステムについては、「特定移行支援システム」という制度が設けられました。デジタル庁が公表した2026年2月の資料によると、2025年10月末時点での特定移行支援システム数は5,009システム(標準化対象34,592システムの約14.5%)に上ります。935の自治体(1,788自治体の52.3%)が少なくとも1つの特定移行支援システムを抱えています。
flowchart TD
A["標準化対象: 34,592システム"] --> B["2025年度末移行予定"]
A --> C["特定移行支援システム\n5,009システム(14.5%)"]
B --> D["移行完了"]
C --> E["2030年度末(令和12年度)\nまでに移行を完了"]
特定移行支援システムの主な認定要件は次の3類型です。
これらの要件に該当する場合、令和12年度(2030年度)末を新たな期限として移行計画を再設定できます。ただし特定移行支援システムに認定されても「移行免除」ではなく、2030年度末の移行完了が義務として残ります。
2025年6月13日には「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策」もあわせて公表されました。当面の対策として以下が示されています。
重点計画は国の方針書ですが、自治体の実務担当者にとって「どの施策が自分の自治体に今すぐ影響するか」を判断することが重要です。以下のフローで確認することをお勧めします。
flowchart TD
A["自治体IT担当者の確認出発点"] --> B{"標準化20業務のうち\n未移行システムはあるか?"}
B -->|ある| C{"特定移行支援\nシステム認定を受けているか?"}
B -->|ない| D["ガバメントクラウド上での\n標準準拠システム運用開始\n→コスト削減効果検証へ"]
C -->|認定あり| E["2030年度末期限での\n移行計画を策定・進捗管理"]
C -->|未認定| F["2025年度末期限が継続\n→移行加速の判断が必要"]
なお、重点計画はガバメントクラウド移行だけでなく、マイナンバーカードの次期対応・アナログ規制見直し・公共サービスメッシュへの連携など多岐にわたります。担当部署が異なる施策については、庁内横断の情報共有体制を整えることが実務上の優先事項となります。
Q1. デジタル庁の重点計画は法律上の義務なのか、努力目標なのか?
重点計画自体は「政府の計画」であり、自治体が直接の罰則を受けるものではありません。ただし、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年法律第40号)は標準化基準への適合を義務づけており、重点計画はその実施方針・工程表に位置づけられています。標準化基準への適合は法的義務です。
Q2. 2025年度末の移行期限に間に合わない場合はどうなるか?
特定移行支援システムの認定を受けることで、2030年度末(令和12年度末)まで移行期限が延長されます。認定を受けていない状態で期限を過ぎた場合の法的制裁は現時点では規定されていませんが、デジタル庁・総務省から移行状況の報告を求められる体制が強化されています。
Q3. 重点計画の「デジタル庁2.0」は自治体に何をもたらすか?
デジタル庁2.0は、AIを最大限活用した行政組織への転換を掲げています。自治体向けには、AI活用支援の拡充・公共サービスメッシュを通じたデータ連携の高度化が見込まれます。直近の実務への影響は限定的ですが、2026年度以降のシステム更改計画にAI連携要件を盛り込む検討を始めることが推奨されています。
Q4. 重点計画の進捗はどこで確認できるか?
デジタル庁のガバメントクラウドポリシーページや、GCInsight(gcinsight.jp)のダッシュボードで、自治体別の移行状況・特定移行支援システム件数を確認できます。
Q5. 標準化・ガバメントクラウド移行のコストはどこから支出するか?
国は「地方公共団体情報システム標準化推進事業費補助金」を設けており、移行にかかる一定の経費を補助しています。補助率・対象経費は年度ごとに更新されるため、総務省・デジタル庁の最新の通知を参照することが必要です。
デジタル庁の重点計画は毎年改定されており、2026年度版の策定も見込まれます。自治体IT担当者として重点計画を実務に活かすには以下の順序で確認することが有効です。
GCInsightのダッシュボードでは、都道府県別・業務別のガバメントクラウド移行状況と特定移行支援システムの分布を確認できます。自治体の現在地把握や上司・議会への説明資料作成にお役立てください。
本記事の執筆にあたり、以下の一次資料を参照しました。
GCInsight編集部
ガバメントクラウド・自治体標準化を専門に調査するリサーチチーム。デジタル庁・総務省公表データを一次資料として継続的に分析し、自治体DX担当者・ITベンダー向けに実務情報を提供しています。
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