全1,741自治体の最新移行状況を毎週お届け

デジタル庁が整備するガバメントクラウドの全体像を公式データで解説。5CSP認定・全1,741自治体中3.7%が移行完了・935団体が特定移行支援対象の最新状況から、利用料体系・2026年以降のロードマップまで網羅。
2026年4月時点でGCInsightが集計したデータによると、全国1,741自治体のうち20業務すべての標準準拠システムへの移行を完了した自治体は約3.7%にすぎません。デジタル庁が当初目標として掲げた「2025年度末(2026年3月)までに原則移行完了」という期限は大多数の自治体にとって達成困難であった実態が、数字に表れています。
なぜこのような状況になったのか——その背景を理解するためには、まずデジタル庁がガバメントクラウドにおいて果たす役割と、制度の仕組み全体を把握する必要があります。
デジタル庁は、地方公共団体情報システムの統一・標準化に関する関係省庁会議(総務省・2026年2月)が示した資料において、次の3つの役割を担うと整理されています。
① CSP(クラウドサービスプロバイダー)の認定・評価
ガバメントクラウドとして利用できるクラウドサービスは、デジタル庁が定めた技術基準を満たしたものに限られます。現在認定を受けているCSPは以下の5社です(2026年2月・デジタル庁サイバーセキュリティ概要資料より)。
| CSP | 運営企業 | 区分 |
|---|---|---|
| Amazon Web Services | アマゾン ウェブ サービス | 外資系 |
| Google Cloud | グーグル | 外資系 |
| Microsoft Azure | マイクロソフト | 外資系 |
| Oracle Cloud Infrastructure(OCI) | オラクル | 外資系 |
| さくらのクラウド | さくらインターネット | 国産 |
さくらインターネットは2023年度に条件付き認定を取得し、2025年度から本格稼働しました。国産クラウドがガバメントクラウドに加わったことは、自治体のCSP選択肢を広げる意味で重要な変化です。
② 調達・利用料スキームの整備
自治体がガバメントクラウドを利用する際の費用は、「自治体が利用量に応じてデジタル庁に支払い、デジタル庁がCSPに一括支払いする」という仕組みを採用しています(地方公共団体のガバメントクラウド利用案内 v3.0・デジタル庁・2025年3月)。
利用料の金額は「当該自治体が利用するクラウドサービスに応じてCSPがデジタル庁に請求する金額に相当する額」を原則とし、従量課金制(使用量に比例した課金)が基本です。2024年度はデジタル庁が自治体分も含めた利用料を一括負担していましたが、制度整備の完了に伴い2025年度からは各自治体が負担する形に移行しています。
③ 補助金の統括・監理と移行支援
総務省と連携し、約7,000億円規模の補助金(デジタル基盤改革支援補助金)の交付先システムに関する統括・監理を担います。総務省の資料によると、補助金対象となる20業務の範囲は以下のとおりです。
デジタル庁・総務省が定める「標準化基本方針」(閣議決定)において、地方公共団体の標準化対象となる基幹業務システムは以下の20業務です。
児童手当 / 子ども・子育て支援 / 住民基本台帳 / 戸籍の附票 / 印鑑登録
選挙人名簿管理 / 固定資産税 / 個人住民税 / 法人住民税 / 軽自動車税
戸籍 / 就学 / 健康管理 / 児童扶養手当 / 生活保護
障害者福祉 / 介護保険 / 国民健康保険 / 後期高齢者医療 / 国民年金
これらのシステムを「ガバメントクラウドを活用した標準準拠システム」に移行することが、標準化法(地方公共団体情報システムの標準化に関する法律)によって各自治体に求められています。
当初の移行期限は「2025年度末(2026年3月)」でした。しかし全自治体が期限内に移行を完了することが困難であることが明確になり、2024年12月の関係省庁会議において「移行支援期間」(2023年4月〜2026年3月)の枠組みと、期限後の対応として「特定移行支援システム」制度が導入されました。
GCInsightが集計した最新データ(2026年4月時点、全1,741自治体対象)によると、特定移行支援システムに該当する見込みのシステムは34,592システム中8,956システム(約25.9%)にのぼり、これに関係する自治体は935団体にのぼります。
flowchart TD
A["全国1,741自治体\n34,592システム"] --> B["2026年3月末 期限"]
B --> C["移行完了\n約3.7%(約64自治体)"]
B --> D["移行未完了\n約96.3%(約1,677自治体)"]
D --> E["特定移行支援対象\n935団体・8,956システム(25.9%)"]
D --> F["通常遅延\n約742団体"]
自治体がガバメントクラウドを利用する形態は、主に2種類あります。
共同利用方式(推奨)
複数の自治体が1つのクラウド環境を共同で利用するモデルです。パッケージベンダー(SaaSベンダー)が標準準拠システムをガバメントクラウド上に構築し、複数自治体が同じシステムを利用します。コストを分散できるため、中小規模自治体に適しています。
単独利用方式
1つの自治体が独自のクラウド環境を確保するモデルです。大規模自治体や独自の業務要件がある場合に選択されますが、費用が高くなりやすい傾向があります。
どちらの方式でも、利用料の支払いフローは「自治体→デジタル庁→CSP」となります。自治体が直接CSPと契約するわけではなく、デジタル庁が利用権付与契約を通じてCSPから自治体へ利用権を付与する形態をとっています。
GCInsightが全国1,741自治体の移行状況を集計したデータ(2026年4月時点)では、都道府県別・業務別に進捗の格差が鮮明になっています。
全国の進捗状況・都道府県別データの詳細はGCInsightの都道府県別ページで確認できます。また業務別・自治体別の詳細は進捗ダッシュボードに集約されています。
935団体・8,956システムを対象とした「特定移行支援」期間が設定されています。この期間中、国は移行支援策として財政面・人材面でのサポートを継続します。各自治体は個別の移行計画を策定し、順次完了を目指すスケジュールとなります。
2025年度以降の利用料スキームでは、各自治体が利用量に応じて費用を負担します。デジタル庁・総務省・財務省・自治体の協議を経て決定される仕組みであり、地方公共団体のガバメントクラウド利用案内 v3.0(デジタル庁・2025年3月)に詳細が記載されています。GCInsightのコスト関連記事では、特定移行支援対象自治体と通常移行自治体の費用負担の違いについて詳しく解説しています。
デジタル庁は2025年度中に2026年度以降のガバメントクラウド調達方針(案)を公表しており、既存5CSPの継続に加えて追加のCSP評価を進める方針を示しています。
「特定移行支援システム」に指定されるかどうかは、自治体にとって大きな意味を持ちます。
| 区分 | 定義 | 支援の有無 |
|---|---|---|
| 特定移行支援システム | 移行が2026年3月に間に合わなかったが、国の支援対象として認定されたシステム | 財政支援・技術支援あり |
| 通常の移行遅延 | 特定移行支援システムに該当しない移行未完了システム | 原則、個別対応 |
特定移行支援の対象・非対象の違いと遅延リスクの詳細については、GCInsightの解説記事でより詳しく整理しています。
Q1. ガバメントクラウドの利用は義務ですか?
標準化法第10条において「努力義務」とされており、絶対的な義務ではありません。ガバメントクラウド以外のクラウド環境が「性能面や経済合理性等を比較衡量して総合的に優れている」と判断できる場合は、ガバメントクラウド以外の選択も可能です。ただし、その判断根拠の整理と説明責任が自治体側に求められます。
Q2. 2026年3月に移行できなかった自治体はどうなりますか?
「特定移行支援システム」として認定を受けた935団体は、継続した国の支援のもとで段階的な移行を進めます。特定移行支援に該当しない場合でも、標準化の義務自体はなくなるわけではなく、引き続き移行に向けた計画策定が求められます。
Q3. ガバメントクラウドの利用料はどのくらいかかりますか?
利用料はCSPおよび利用量によって異なり、固定費用は基本的にありません(従量課金制)。デジタル庁が利用権付与契約に基づいてCSPに支払う金額が、そのまま自治体の負担額の基準となります。具体的な見積もりはCSP・SIerと協議の上、自治体のシステム規模に応じて算定します。
Q4. 複数のCSPを組み合わせることはできますか?
技術的には可能です。業務システムごとに最適なCSPを選択する「マルチクラウド」構成も検討できます。ただし、CSP間のデータ連携や運用管理の複雑化に注意が必要です。CSP別の特徴比較はGCInsightのクラウド別ページで確認できます。
3.7%という移行完了率の数字は、ガバメントクラウド移行が「完了した話」ではなく「現在進行中の課題」であることを示しています。自治体担当者・SIerにとって、最新の進捗データと他自治体の動向を継続的に把握することが、自団体の移行計画策定に直結します。
gcinsight.jpでは、デジタル庁・総務省の公式データに基づいた自治体標準化の最新情報を随時更新しています。移行計画の立案・進捗確認にお役立てください。
GCInsight編集部
ガバメントクラウド・自治体標準化を専門に調査するリサーチチーム。デジタル庁・総務省公表データを一次資料として継続的に分析し、自治体DX担当者・ITベンダー向けに実務情報を提供しています。
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