全1,741自治体の最新移行状況を毎週お届け

移行完了率38.4%、特定移行支援8,956システム、935自治体が期限未達——2026年3月末のガバメントクラウド移行をデータで総括。GCInsight編集部が全体像を分析します。
2026年3月末。3年間の「移行支援期間」が終わりました。
デジタル庁が2026年2月27日に公表した最新データによれば、標準化対象34,592システムのうち移行完了は13,283システム——完了率38.4%。1,788団体のうち935団体(52.3%)が少なくとも1つの特定移行支援システムを抱えています。
この数字は「失敗」なのか、それとも「想定の範囲内」なのか。
なお、デジタル庁公式ページ(digital.go.jp/policies/local_governments)では2026年3月時点においても標準仕様書の更新が続いており(2026年3月18日:標準仕様書等の管理方針更新、3月11日:ガバメントクラウド利用における推奨構成の更新)、制度整備と移行実務は並行して進んでいる状況です。
| 項目 | 数値 | 割合 |
|---|---|---|
| 標準化対象団体数 | 1,788団体 | — |
| 特定移行支援システム保有団体 | 935団体 | 52.3% |
| 標準化対象システム総数 | 34,592システム | — |
| 移行完了システム数(2026年1月末) | 13,283システム | 38.4% |
| 特定移行支援対象システム数 | 8,956システム | 25.9% |
(出典:デジタル庁「特定移行支援システムの該当見込み(概要)(令和7年12月末時点)」2026年2月27日公表、https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c58162cb-92e5-4a43-9ad5-095b7c45100c/0d69c7bf/20260227_policies_local_governments_doc_1.pdf)
「52.3%が未達」は衝撃的に見えますが、これらの多くは制度として認定された計画延長です。単なる「遅れ」とは制度上の意味が異なります。
38.4%という数字は「標準準拠システムへの本番移行が完了したシステム割合」を指します。一方、総務省が標準化PMOツールで管理する「移行作業の取組完了率」は別の指標です。
総務省が2026年初頭に公表した地方行政デジタル化のデータによれば、令和7年度12月末時点における「移行作業取組の完了率(40項目中の完了項目割合)」は以下のとおりです(出典:総務省 001053409.pdf、https://www.soumu.go.jp/main_content/001053409.pdf):
| 団体区分 | 令和5年度完了率 | 令和6年度完了率 | 令和7年度完了率(12月末) |
|---|---|---|---|
| 全市区町村 | 43.4% | 61.6% | 77.1% |
| 指定都市 | 42.9% | 53.2% | 60.0% |
| 特別区 | 55.2% | 70.3% | 80.0% |
| 中核市 | 45.8% | 63.3% | 75.3% |
| 指定都市・中核市以外の市 | 42.4% | 61.3% | 77.0% |
| 町村 | 43.5% | 61.6% | 77.6% |
| 都道府県 | 26.4% | 42.8% | 52.8% |
「作業の77.1%完了」と「システム本番移行38.4%完了」は別の指標であり、作業面ではより多くの自治体が前進しています。指定都市(政令市)の作業完了率60.0%の低さは、システム規模・業務複雑性の大きさを反映しています。
すべての業務が均等に遅れているわけではありません。
民間企業に例えれば、社内完結のツール(勤怠管理等)は移行しやすいが、外部システムと密結合した基幹ERP(会計・人事・給与)は時間がかかる——というごく当然の構造です。
業務別の詳細データはGCInsightダッシュボードで確認できます。
GCInsightが保有する都道府県別進捗データ(2026年1月末時点)によれば、移行進捗率(作業完了率ベース)に大きな地域差があります。
進捗率が低い都道府県(ワースト10):
| 都道府県 | 平均進捗率 | 市区町村数 | クリティカル団体数 |
|---|---|---|---|
| 富山県 | 70.0% | 15 | 0 |
| 滋賀県 | 70.6% | 19 | 3 |
| 京都府 | 70.9% | 26 | 1 |
| 秋田県 | 73.0% | 25 | 2 |
| 島根県 | 74.1% | 19 | 2 |
| 新潟県 | 74.4% | 30 | 3 |
| 佐賀県 | 74.8% | 20 | 1 |
| 岐阜県 | 74.9% | 42 | 0 |
| 兵庫県 | 75.1% | 41 | 3 |
| 愛媛県 | 75.1% | 20 | 0 |
進捗率が高い都道府県(トップ10):
| 都道府県 | 平均進捗率 | 市区町村数 | 完了団体数 |
|---|---|---|---|
| 群馬県 | 94.2% | 35 | 9 |
| 福井県 | 93.6% | 17 | 0 |
| 茨城県 | 93.1% | 44 | 4 |
| 宮崎県 | 89.2% | 26 | 1 |
| 三重県 | 88.8% | 29 | 6 |
| 岩手県 | 88.6% | 33 | 6 |
| 栃木県 | 88.4% | 25 | 3 |
| 山形県 | 88.1% | 35 | 2 |
| 山梨県 | 88.1% | 27 | 1 |
| 千葉県 | 86.1% | 54 | 2 |
(出典:GCInsight progress_snapshots、2026年1月末時点。詳細は都道府県別ダッシュボードで確認可能)
ワーストの富山県(70.0%)とトップの群馬県(94.2%)では24ポイント以上の差があります。地方単独の取り組みの差だけでなく、都道府県のリエゾン支援体制(デジタル庁が各都道府県に配置)の効果差も影響していると見られます(出典:総務省手順書 000966924.pdf、https://www.soumu.go.jp/main_content/000966924.pdf)。
内閣府規制改革WG(2024年11月)のデータでは、中核市平均で2.3倍、最大5.7倍のコスト膨張が報告されています。通信回線費の純増(美里町・川島町で年2,400万円)、マネージドサービスの単価上昇、運用管理委託費の新規発生が3大要因です。
こうした状況を受け、デジタル庁は2025年6月13日に「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策」を公開しました(出典:デジタル庁公式ページ 2025年6月13日掲載、https://www.digital.go.jp/policies/local_governments)。これはコスト問題が想定外ではなく、制度として対処すべき構造的課題として公式に認定されたことを意味します。
詳細はコスト増大の構造的3要因を参照ください。
「移行作業やその直後の運用に想定以上のSEリソースが必要であることが判明し、事業者による移行スケジュールの大幅な見直しが行われた」(デジタル庁 2026年2月27日資料)
1社で数百団体を担当するベンダーもある中、PM・SEの稼働分散が遅延の直接原因となりました。特定移行支援制度の定義にも「事業者のリソースひっ迫などの事情により、令和8年度(2026年度)以降の移行とならざるを得ないことが具体化したシステム」が明示されており(出典:デジタル庁 地方公共団体情報システム標準化基本方針改定版 20241219、https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/66264825-2451-43ce-8da5-1adce44c72b8/24cc7ebe/20241219_meeting_local_governments_outline_04.pdf)、リソース不足は制度設計上の想定内の事態として扱われています。
2030年度末という最終期限は、単なる目安ではありません。デジタル庁・総務省・制度所管省庁が「主務省令において所要の移行完了の期限を設定する」と明記した制度的な期限です。
「概ね5年以内に標準準拠システムへ移行できるよう積極的に支援する」(出典:デジタル庁 地方公共団体情報システム標準化基本方針改定版、20241219)
つまり、移行は**2026年3月で終わるのではなく、ここからが「第2フェーズ」**です。
ガバメントクラウドの利用システム数も増加を続けており、2024年度末の2,808システムから2025年9月末時点では5,237システム(国147システム+地方公共団体5,090システム)まで拡大しています(出典:デジタル庁「デジタル・サイバーセキュリティ概要資料」2026年2月3日、https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/b37edb39-2a1c-4a1f-8c5e-431fcc299cd5/3940f366/20260203_digital-cybersecurity.outline.05.pdf)。
全国1,741自治体のシステム一斉入替は、「全国の支店・営業所に同じERPを同時導入する」プロジェクトに相当します。
社員数名の営業所も、社員数千人の本社も、同じパッケージ・同じ基盤・同じ期限。しかも、導入するERPの仕様書が途中で何度も改定される。これで3年以内に全拠点完了を目指すのは、民間のSIerなら「最初から無理だった」と言うでしょう。
問題は「間に合わなかったこと」ではなく、「間に合わない計画をどう修正するか」です。
「安定性が最優先だよ。新しいシステムに変えたら住民票が出せなくなりましたでは済まない」(note.com 標準化どうしましょう)
「3年で全部移行できると思ってた人、現場にはほとんどいない」(X上の自治体SE)
「そもそも標準仕様書が確定してない段階で開発スタートを求められた。家の設計図が変わり続ける中で建築してるようなもの」(note.com 地場ベンダー視点の記事)
GCInsight編集部は、38.4%という完了率を**「3年計画の妥当な中間地点」**として評価すべきだと分析します。
当初の「令和7年度末までに移行を目指す」は、法的強制力のない努力目標でした。にもかかわらず38.4%のシステムが完了し、残りの大半は制度的に認定された計画延長の枠内にあります。また移行作業取組の完了率(40項目ベース)では全市区町村平均77.1%に達しており(令和7年12月末時点)、進捗の実態は単純な完了システム数以上に前進しています。
これは「計画の失敗」というよりも、計画策定時の規模認識が楽観的だったことの修正と見るべきです。
真に注視すべきは以下の3点です:
当編集部は、この3点をGCInsightダッシュボードで継続追跡し、四半期ごとにデータを更新していきます。
「移行完了率は上がったが、コストは下がったのか?」——次の記事では、コスト2.3倍の内訳|ガバメントクラウド移行費用の4分類を取り上げます。
GCInsight編集部
ガバメントクラウド・自治体標準化を専門に調査するリサーチチーム。デジタル庁・総務省公表データを一次資料として継続的に分析し、自治体DX担当者・ITベンダー向けに実務情報を提供しています。
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