
デジタル庁が開発したPMH(Public Medical Hub)の仕組みを徹底解説。医療費助成・予防接種・母子保健の3分野でマイナンバーカードを活用したデジタル化を推進。2026年4月時点の先行実施自治体数と自治体システム標準化との連動方針を一次ソースに基づき解説します。
PMH(Public Medical Hub)は、デジタル庁が2023年度(令和5年度)に開発した「自治体・医療機関等をつなぐ情報連携システム」です。医療費助成、予防接種、母子保健といった自治体が実施主体となっている行政サービスを対象に、マイナンバーカードを活用してデジタル化を推進します(出典: デジタル庁 PMH政策ページ)。
従来の課題は明確です。自治体が発行する医療費助成の受給者証や予防接種の接種券は紙が基本であり、住民・自治体・医療機関の三者いずれにとっても業務負担が大きい状態でした。PMHはこの紙ベースの情報連携を根本的に変える基盤として位置づけられています。
PMHの名称は「公共医療ハブ」を意味し、自治体システムの標準化の取組と連動しながら、各種医療・福祉情報を安全に共有するインフラです。2023年6月2日に内閣官房が決定した「医療DXの推進に関する工程表」においても、「関係機関や行政機関等の間で必要な情報を安全に交換できる情報連携の仕組みを整備し、自治体システムの標準化の取組と連動しながら、介護保険、予防接種、母子保健、公費負担医療や地方単独の医療費助成などに係る情報を共有していく」と明記されています。
子ども医療費助成や障害者医療費助成を受ける際、これまでは紙の受給者証を医療機関の窓口で提示する必要がありました。PMH導入後は、マイナンバーカード(マイナ保険証)を提示するだけで受診できるようになります。
精神通院医療、更生医療、育成医療など、複数の医療費助成制度にもPMHは対応しており、自治体の設定によって対象制度が異なります。
予防接種において、住民はマイナポータルから事前に予診票を入力し、マイナンバーカードを接種券として利用できます。接種後の記録はリアルタイムでマイナポータルに反映されるため、接種履歴の管理が容易になります。また、自治体はマイナポータル経由で接種勧奨通知を送ることができ、接種漏れ防止にも効果があります。
乳幼児健診では従来、母子手帳・受診表・問診票など複数の書類を持参する必要がありました。PMH導入後は、マイナポータルで事前に問診票を入力し、受付ではマイナンバーカードの読み取りだけで手続きが完了します。健診結果もマイナポータルで確認できるため、記録の散逸を防ぎます(出典: デジタル庁ニュース「子育て世帯の受診手続がカンタンに」)。
PMHの先行実施事業は2023年度から段階的に拡大しています。デジタル庁の最新資料(2026年4月10日更新)によると、以下の状況です。
flowchart TD
A["2023年度\n医療費助成5自治体\n予防接種9自治体\n母子保健9自治体"] --> B["2024年度\n医療費助成153自治体追加\n合計176自治体超"]
B --> C["2025〜2026年度\n全国展開へ向け拡大継続\n2026年4月時点も更新中"]
2026年4月10日更新の「PMH(医療費助成)先行実施自治体一覧」では、北海道・青森県・東京都・愛知県・大阪府をはじめとする全国各地の自治体が参加しています(出典: デジタル庁 PMH先行実施自治体一覧PDF)。
北海道内だけでも、北海道(都道府県)、帯広市、三笠市、歌志内市、松前町、知内町、木古内町など多数の自治体が登録されており、先行実施が全国規模で定着しつつあることが確認できます。
| 分野 | 2023年度開始 | 2024年度追加 | 状況 |
|---|---|---|---|
| 医療費助成 | 5自治体・32医療機関 | 153自治体追加 | 順次拡大中 |
| 予防接種 | 9自治体・56医療機関 | 追加公募継続 | 稼働中 |
| 母子保健 | 9自治体・13医療機関 | 追加公募継続 | 稼働中 |
PMHは単独で機能するシステムではなく、地方公共団体情報システムの標準化と密接に連動しています。
自治体の基幹業務システム(住民基本台帳、国民健康保険、児童手当など20業務)がガバメントクラウド上の標準準拠システムへ移行するプロセスの中で、PMHはその「医療・保健」分野の情報連携基盤として位置づけられています。
具体的には、PMHと自治体の基幹システム(健康管理システム等)がAPI経由で連携するアーキテクチャが採用されており、デジタル庁は「自治体・自治体システムベンダー向けのAPI設計書」を2026年3月23日に更新・公開しています。
自治体のシステム担当者やベンダーは、このAPI設計書をもとにPMH接続の実装を進める必要があります。GCInsightでは自治体標準化の進捗状況やパッケージ一覧で各自治体・ベンダーの対応状況を確認できます。
flowchart TD
A["先行実施事業への\n公募申請"] --> B["デジタル庁と\n基本合意締結"]
B --> C["自治体システムベンダーと\nAPI連携設計"]
C --> D["医療機関・薬局への\n端末導入支援"]
D --> E["住民向け\n周知・広報"]
E --> F["本格稼働\nマイナカード受診開始"]
PMH導入を検討する自治体が準備すべき主要事項は以下のとおりです。
1. 既存健康管理システムとのAPI連携確認 既存の健康管理システムがPMHのAPI仕様に対応しているか確認が必要です。デジタル庁が公開するAPI設計書を参照し、システムベンダーに対応可否を確認してください。
2. 医療機関・薬局のオンライン資格確認端末確認 PMHによる医療費助成のデジタル化には、医療機関・薬局側にオンライン資格確認等システムの端末が導入されている必要があります。デジタル庁は「医療費助成オンライン資格確認の導入済み医療機関・薬局リスト」を定期更新しており(2026年4月3日最終更新)、対応状況を確認できます。
3. 対象制度の整理 医療費助成制度は自治体によって異なります。精神通院医療(更生医療)・育成医療・子ども医療費助成・ひとり親家庭医療費助成など、自治体が実施する制度を整理し、PMHで対応する範囲を決定する必要があります。
4. 住民への周知 マイナンバーカードを受給者証・接種券・受診券として使う運用は、住民にとって新しい体験です。窓口での説明資料作成やウェブサイトでの案内ページ設置(千葉県松戸市、埼玉県新座市、茨城県神栖市等の先行自治体が事例を公開)が効果的です。
デジタル庁はPMHに関する資料を頻繁に更新しています。2026年に入ってからの主要更新は以下のとおりです。
| 更新日 | 更新内容 |
|---|---|
| 2026年4月10日 | PMH(医療費助成)先行実施自治体一覧・PMH制度関連マスタ更新 |
| 2026年4月3日 | 医療費助成オンライン資格確認の導入済み医療機関・薬局リスト更新 |
| 2026年3月23日 | 先行実施自治体一覧・API設計書・動作確認チェックリスト更新 |
| 2026年3月11日 | 導入済み医療機関・薬局リスト・対応済み事業者一覧更新 |
| 2026年3月6日 | PMH制度関連マスタ更新 |
PMH関連資料の更新頻度は月1〜2回程度と高く、先行実施事業を進める自治体はデジタル庁PMH政策ページをブックマークし、定期的に確認することが推奨されます。
大規模自治体の動向として、東京都では「こどもDXプロジェクト」の一環としてPMHを活用した「母子保健オンラインサービス」を推進しています(GovTech東京・東京都デジタルサービス局)。東京都の場合、令和6年度に小児慢性特定疾病医療受給者証、自立支援医療受給者証(精神通院)、特定医療費(指定難病)受給者証のPMH接続を完了させています。
デジタル地方創生サービスカタログ(2024年冬版)にもPMHが掲載されており(掲載番号7966)、デジタル庁が地方創生の文脈でもPMHを推進する姿勢が確認できます。
Q1. PMHへの参加は強制ですか?
現時点では、PMHへの参加は任意です。デジタル庁は先行実施事業への公募形式で参加自治体を募っており、参加を希望する自治体が申請するかたちです。ただし、2026年以降の全国展開に向けてロードマップが策定されており、将来的には標準準拠システムとの連携が前提となる可能性があります。
Q2. PMH導入にかかるコストはどの程度ですか?
PMHシステム自体はデジタル庁が開発・運用するため、自治体の費用負担はシステム接続のための改修費が中心となります。医療機関・薬局側のオンライン資格確認端末の整備については補助金制度が設けられています。具体的な費用は自治体のシステム環境やベンダーによって異なるため、デジタル庁の担当窓口や既存システムベンダーへの確認が必要です。
Q3. PMHはガバメントクラウド上で動作しますか?
PMHはデジタル庁が開発・運用する基盤システムであり、ガバメントクラウド(政府共通のクラウド基盤)を活用しています。一方、自治体側は既存の健康管理システムとAPIで連携する形であるため、自治体の基幹システムがガバメントクラウドに移行していない段階でも参加は可能です。
Q4. PMHと自治体標準化の進捗はどこで確認できますか?
デジタル庁のPMH政策ページで最新情報を確認できます。また、GCInsightでは都道府県別の標準化進捗や移行リスク情報を提供しており、自治体の標準化対応状況の全体像を把握できます。
デジタル庁のPMH(Public Medical Hub)は、自治体が長年抱えてきた医療費助成・予防接種・母子保健における紙ベースの情報連携の課題を、マイナンバーカードとデジタル技術で解決する基盤システムです。
2023年度の先行実施開始から約3年が経過し、2026年4月時点で100を超える自治体が先行実施に参加しています。デジタル庁は毎月資料を更新しており、API設計書・動作確認チェックリスト・先行実施自治体一覧が随時アップデートされています。
自治体のDX担当者・情報政策担当者にとって、PMHへの対応はもはや「将来の検討事項」ではなく、2026年度中に方針を固めるべき現実的な課題です。まずは自治体の既存健康管理システムとPMHのAPI仕様の整合性確認と、医療機関側のオンライン資格確認端末の整備状況把握から着手することをお勧めします。
自治体の標準化対応状況やベンダー別の対応製品を確認したい場合は、GCInsightのダッシュボードやパッケージ一覧をご活用ください。
GCInsight編集部
ガバメントクラウド・自治体標準化を専門に調査するリサーチチーム。デジタル庁・総務省公表データを一次資料として継続的に分析し、自治体DX担当者・ITベンダー向けに実務情報を提供しています。
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