
特定移行支援システムの該当件数が2025年7月末の3,770件から12月末には8,956件(25.9%)へ3カ月で倍増。935自治体(52.3%)が2026年度以降の移行を余儀なくされた実態と、自治体が今すぐ取るべき対応策をデジタル庁公表データで解説します。
「特定移行支援システム」とは、自治体の20業務基幹システムを2025年度末(2026年3月末)までに標準準拠システムへ移行する期限に間に合わない、または移行の難易度が極めて高いと認定されたシステムを指します。
デジタル庁・総務省が2024年9月の地方公共団体情報システム標準化基本方針改定で正式に定義しました。対象システムに認定されると、国が最大2030年度末まで移行経費を含めて継続支援します。
以下のいずれかに該当するシステムが「特定移行支援システム」として申請できます。
デジタル庁が公表している「特定移行支援システムの該当見込み」データを時系列で追うと、その増加スピードの異常さが浮かび上がります。
| 調査時点 | 該当システム数 | 全体比率 | 該当自治体数 | 自治体比率 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年7月末 | 3,770件 | 10.9% | 643団体 | — |
| 2025年10月末 | 5,009件 | 14.5% | 743団体 | 41.6% |
| 2025年12月末 | 8,956件 | 25.9% | 935団体 | 52.3% |
出典: デジタル庁「特定移行支援システムの該当見込み(令和7年12月末時点)」
2025年10月末から12月末のわずか2カ月間で、3,947件(+78.8%)という急増を記録しました。2025年7月末との比較では、5カ月間で2.38倍に膨れ上がっています。
自治体数でみると、2025年12月末時点で標準化対象の1,788団体のうち935団体(52.3%)、つまり自治体の過半数が少なくとも1つの特定移行支援システムを抱えている状況です。
xychart-beta
title "特定移行支援システム該当件数の推移(2025年)"
x-axis ["2025年7月末", "2025年10月末", "2025年12月末"]
y-axis "件数" 0 --> 10000
bar [3770, 5009, 8956]
自治体システムの移行時期は、当初賦課(固定資産税・住民税など)の繁忙期を避けるため、例年7月から翌年1月の「夏秋冬」に集中します。2025年秋から移行作業が本格化した結果、IT各社のSEが一斉に稼働し始め、供給能力の限界が露呈しました。
デジタル庁のデータによると、2025年12月末時点の8,956件のうち「事業者のリソース逼迫による遅延」が4,584件と、10月末から1,239件(+37%)増加しています。移行作業が集中する繁忙期になって初めて、ベンダー側が工数を正確に見積もれるようになったことが、急増の主因です。
1つの自治体が複数の基幹システムを抱えている場合、主要システムの遅延が連携システムの移行スケジュールも崩します。たとえば住民記録システムが遅延すると、住民税・国民健康保険・介護保険など連携する複数システムのスケジュールが再調整を余儀なくされます。
この「ドミノ倒し型の遅延」が、10月末から12月末にかけて広範囲に波及したとみられます。
2025年10月末の調査では、まだ移行作業が本格化していなかったため、自治体・ベンダーとも楽観的なスケジュールを維持していた可能性があります。12月末に向けて実態ベースの見直しが進み、申請件数が適正化されたとも考えられます。
flowchart TD
A["SE不足の顕在化\n(秋以降の移行ピーク)"] --> D["特定移行支援\nシステム急増\n8,956件"]
B["連鎖的な\nスケジュール崩壊"] --> D
C["申請数の\n適正化"] --> D
認定されないまま旧システムを継続稼働すると、法的な根拠が曖昧になります。まずはデジタル庁の申請窓口を通じて正式に認定申請を行うことが最優先です。
認定を受ければ、概ね5年以内(2030年度末まで)の移行スケジュールを提出し、国の財政支援と技術支援を継続して受けられます。
特定移行支援システムに認定された後は、ベンダーと協議して現実的な移行完了日を確定させる必要があります。この際、以下の点を必ず確認してください。
特定移行支援期間中は、旧システムの保守費用と新システムへの移行経費が重なる「二重コスト」が発生します。国の財政支援スキームを最大限活用するには、現行の運用コストと移行後のコスト推計を事前に整理しておくことが重要です。
GCInsightのコスト効果ページ(/costs)では、自治体規模別のガバメントクラウド移行コスト事例を確認できます。自団体の規模感と比較してみてください。
特定移行支援システムに認定されずに移行を先送りし続けた場合、以下のリスクが発生します。
法的リスク: 「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(2021年施行)は2025年度末を移行期限と定めています。特定移行支援認定を受けない状態での期限超過は、法令上の問題となりうる(ただし罰則規定はない)。
財政リスク: 国の補助スキームは「特定移行支援」認定を前提として設計されています。認定外での旧システム継続稼働は、補助の対象外となり全額自治体負担になる可能性があります。
技術リスク: 老朽化した旧システムの保守切れリスクです。ベンダーが撤退要件に該当する場合、認定取得前にサポート終了となれば、最悪の場合システム停止につながります。
詳細なリスク分類は、GCInsightの遅延リスク一覧(/risks)で確認できます。
デジタル庁は「特定移行支援システムの該当見込み」を月次・四半期ごとに更新・公表しています。2026年1月末時点のデータも2026年4月に公表済みで、2025年12月末の8,956件からさらに変化している可能性があります。
最新動向として、以下の点に注目が必要です。
自治体別の移行状況はGCInsightのダッシュボード(gcinsight.jp)でも確認できます。都道府県別・業務別の進捗状況を可視化しており、他自治体との比較に活用いただけます。
Q1. 特定移行支援システムに認定されると、いつまでに移行すればよいですか?
認定後は、自治体が申し出た移行スケジュールをもとに、デジタル庁・総務省・所管省庁が「概ね5年以内」を目安とした省令上の移行完了期限を個別に設定します。2025年度末から5年以内であれば、最長で2030年度末が目安です。ただし、具体的な期限は個別のスケジュール協議によって確定します。
Q2. ベンダーのリソース不足が理由で特定移行支援に申請したい場合、どう証明するのですか?
ベンダー側から「2025年度末までの移行が困難である」旨の意見書・調査回答が必要です。デジタル庁は2023〜2024年にシステム開発事業者へのアンケートを実施しており、その回答実績が申請の根拠となるケースが多いです。自治体単独では証明しにくいため、担当ベンダーと協力して申請書類を整備してください。
Q3. 特定移行支援システムが増え続けているなら、2030年度末の期限も延びる可能性はありますか?
現時点では2030年度末が法定上の上限として示されています。ただし、8,956件という数字は2025年度末段階での見込みです。移行完了の進捗によっては、将来的に制度の見直しが議論される可能性は否定できませんが、現行方針に従い2030年度末を前提に計画を立てることが基本です。
記事内で参照した主要ドキュメントは以下の通りです。
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