
「自治体クラウド」と「ガバメントクラウド」は何が違うのか。誕生の経緯、技術・制度上の違い、実務担当者が知っておくべきポイントを比較テーブルと図解で整理します。
自治体クラウドとは、複数の地方自治体が共同でクラウド基盤を利用することで情報システムのコスト削減と運用効率化を図る仕組みです。ガバメントクラウドとは、デジタル庁が認定した国全体の共通クラウド基盤であり、自治体の基幹業務システムを標準化しながら集約するための制度的インフラです。
2つの言葉は混同されがちですが、生まれた時代も目的も異なります。本記事では、自治体担当者・議員・市民がこの違いを正確に理解できるよう、定義・歴史・制度上の違い・実務への影響を順に解説します。
自治体クラウドは、総務省が2010年代前半から推進してきた取り組みです。複数の市区町村が住民基本台帳システムや税務システムなどの業務システムを共同調達・共同利用することで、個別に保有・運用するよりもコストを下げることを目的としています。
主な特徴は次のとおりです。
ガバメントクラウドは、デジタル庁が2021年に制度設計し、2022年以降に本格展開している国の共通クラウド基盤です。AWS・Microsoft Azure・Google Cloud・Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の4社(2026年4月時点)がデジタル庁から認定を受けており、自治体はこの中から選んで基幹17業務を移行することが求められています。
主な特徴は次のとおりです。
「自治体クラウド」が先に登場し、「ガバメントクラウド」はその後継・発展形として生まれました。以下に経緯をまとめます。
2012〜2017年:自治体クラウドの普及期
総務省は2012年度からクラウド化を推進し、複数自治体が同一のベンダーシステムを共同で使う形が広がりました。この時点では「標準化」は義務ではなく、各自治体がカスタマイズを加えながら部分的にコスト削減を目指す状態でした。
2021年:デジタル庁発足とガバメントクラウド誕生
デジタル社会形成基本法の成立とデジタル庁の発足により、国全体のDX推進体制が整備されました。ガバメントクラウドはこの文脈で生まれた「国が束ねる共通クラウド基盤」であり、ベンダーロックインの解消・セキュリティ水準の統一・業務標準化の三位一体で設計されています。
2022〜2026年:移行期
自治体は2026年3月末を目安にガバメントクラウドへの移行を進めてきましたが、2026年1月末時点の移行完了率は38.4%にとどまりました。「自治体クラウド」のまま運用を続ける自治体も多く、両者の混在状態が続いています。
| 比較軸 | 自治体クラウド | ガバメントクラウド |
|---|---|---|
| 推進主体 | 総務省 | デジタル庁 |
| 開始時期 | 2012年頃〜 | 2021年〜 |
| 利用クラウド | 制限なし(オンプレも可) | デジタル庁認定4社のみ |
| 標準化 | 義務なし(カスタム可) | 標準仕様書準拠が義務 |
| 対象業務 | 自治体が選択 | 標準化対象20業務 |
| 費用補助 | 総務省補助金(地域情報化推進) | デジタル庁補助金(移行・整備費) |
| セキュリティ基準 | 自治体ごとに異なる | 政府統一基準(クラウドサービス認定) |
| カスタマイズ | 広範に可能 | 原則制限(標準仕様逸脱不可) |
| 共同利用の形 | 近隣市区町村による任意参加 | 全自治体を対象とする共通基盤 |
| 最終的な目標 | コスト削減・運用効率化 | 標準化・セキュリティ・コスト削減の三位一体 |
詳細なコスト構造については コスト分析ページ も参照してください。
現在のルールでは、自治体に選択の余地はほとんどありません。標準化対象20業務については、ガバメントクラウド(デジタル庁認定クラウド上の標準準拠システム)への移行が制度上求められています。
ただし、以下の点には注意が必要です。
移行タイミングは延長可能
2026年3月末はあくまでも移行支援期間の目安であり、完了していない自治体に対して即座にペナルティが科されるわけではありません。ただし、補助金の受取条件や国の支援施策は移行完了自治体を優先する方向で設計されているため、遅れれば遅れるほど自治体が負担するコストは増加します。
標準化対象外業務は引き続き自治体クラウドも選択肢
標準化対象外の業務システム(例:図書館システム、学校給食管理など)については、引き続き自治体クラウドや独自クラウドを選択できます。
既存の自治体クラウド契約との整合
既存の共同利用契約が残っている場合、ガバメントクラウドへの移行に伴う違約金や契約調整コストが発生することがあります。移行計画策定時に必ず確認が必要です。
ガバメントクラウドの全体像については ガバメントクラウドとは何か の記事も合わせてご覧ください。
Q1. 自治体クラウドとガバメントクラウドは統合されるのですか?
完全な統合ではありませんが、標準化対象20業務については事実上ガバメントクラウドへの集約が進んでいます。対象外業務については自治体クラウドの仕組みを継続利用することも可能です。なお、デジタル庁は中長期的に対象業務を拡大する方向で検討しており、今後の政令改正を注視する必要があります。
Q2. 小規模自治体でもガバメントクラウドに移行しなければなりませんか?
はい。対象業務は自治体規模を問わず移行が求められます。ただし、人口が少ない自治体向けには近隣自治体との共同移行や、ベンダーによるSaaS型の提供が活発になっており、実務上の負担軽減策が整備されつつあります。
Q3. ガバメントクラウドに移行するとカスタマイズができなくなりますか?
標準仕様書の範囲外の機能追加・変更は原則として認められていません。ただし、住民サービスの継続に必要な「追加機能」については、国への申請を経て認められるケースがあります。カスタマイズの幅が大幅に狭まることは事実であり、これを「コスト低減のトレードオフ」として捉える自治体が多くなっています。詳細は ガバメントクラウドのコスト構造 をご確認ください。
Q4. 自治体クラウドを利用中ですが、ガバメントクラウドへの移行費用はどのくらいかかりますか?
自治体の規模・業務数・現行ベンダーとの関係により大きく異なります。デジタル庁の公開データによると、中核市規模では移行・整備費が数億円規模になるケースもあります。補助金の活用と並行して、国庫補助対象範囲の精査が重要です。
GCInsightでは全国1,741自治体の移行状況をデータで追っています。自団体の進捗確認や他自治体との比較は トップページ からご確認ください。
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