
ガバメントクラウドで97%のシェアを持つAWSと、コスト指数55・転送料月10TB無料のOCIを徹底比較。RKKCS・GCCのOCI採用事例を踏まえ、自治体が正しいCSP選定をするための判断軸を解説します。
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GCInsightダッシュボードが集計するガバメントクラウド移行状況データによれば、2026年3月時点で標準準拠システムのCSP別稼働件数はAWS 1,452件(97%)、Azure 30件(2%)、GCP 10件、OCI 4件です。圧倒的なAWS優位は明白ですが、この数字がそのまま「AWSが最適解」を意味するわけではありません。
デジタル庁はガバメントクラウドに現在5つのCSPを採択しています(AWS、Google Cloud、Microsoft Azure、Oracle Cloud Infrastructure、さくらのクラウド)。このうちOCIは、コスト構造・転送料・オラクルDB互換性の面で際立った特性を持ちます。自治体情報システム担当者がCSP選定を適切に行うには、「実績シェア」ではなく「総所有コストと業務適合性」で判断する必要があります。
本記事では、GCInsightデータとデジタル庁・OCI公式資料をもとに、AWS vs OCIを5軸で比較します。
コスト比較においてもっとも重要なのは、単純な「インスタンス料金」ではなく**転送料・ライセンス・サポート費用を含む総所有コスト(TCO)**です。
GCInsightが算出するコスト指数(AWS=100基準)では、OCIは指数55——同等スペックでAWSの約半分のコストです。この差を生む構造的要因が「データ転送料」にあります。
| 費用項目 | AWS | OCI |
|---|---|---|
| コスト指数(同等スペック比) | 100(基準) | 55 |
| データ転送料(外部)無料枠 | 月100GBまで | 月10TBまで |
| 無料枠超過の単価(1GBあたり) | 約12〜16円 | 約3.5円 |
| オラクルDBライセンス持ち込み | 別途調整 | BYOLで割引適用 |
| 予約インスタンス割引 | 最大72%(3年) | 最大36%(1年)〜 |
| FinOps支援ツール | Cost Explorer / Savings Plans | OCI Cost Management |
| 国内リージョン | 大阪・東京 | 大阪・東京 |
住民基本台帳・税務・介護など自治体基幹業務は、住民数に比例したトランザクションと定期的な大量データ出力(法定帳票、CSV連携)が発生します。月間データ転送量が数TB規模になる自治体ほど、OCI転送料無料枠の効果が大きくなります。
CSP選定は「自治体が直接選ぶ」というより、パッケージベンダーがシステム基盤として選ぶ構造です。そのため、自治体が契約しているパッケージが対応しているCSPに必然的に誘導されます。
flowchart TD
A["自治体\n(システム発注)"] --> B["パッケージベンダー選定"]
B --> C["AWS対応ベンダー群\nTKC / LGWAN-ASP等"]
B --> D["OCI採用ベンダー\nRKKCS / GCC"]
C --> E["AWS\n1,452件 97%"]
D --> F["OCI\n4件 現在拡大中"]
OCI陣営の代表格がRKKCS(琉球コムネット)とGCCです。
AWSが圧倒的シェアを持つのは、TKC・日立・富士通・NEC等の大手ベンダーがAWSを基盤として先行整備したためです。GCInsightのクラウド別ベンダー一覧ページでは、各CSPに対応するパッケージの最新リストを確認できます。
ガバメントクラウドに採択されているCSPは、いずれもデジタル庁の厳格な技術要件とISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)認証を取得しています。この点ではAWS・OCI間に本質的な差はありません。
共通要件:
クラウド間接続(AWS-OCI間等のマルチクラウド構成)については、デジタル庁が整備したクラウド間ネットワークの費用を政府が負担する方針が示されています(出典: 内閣官房デジタル行財政改革会議資料, 2025年4月)。
移行支援体制は両CSPで異なります。
AWSの強みは生態系の厚さです。AWSパートナー(APN)に参加する国内SIerが多く、支援リソースの調達が容易です。一方で、ベンダーロックインや「AWS前提」の設計が進みやすく、移行後のコスト最適化に習熟したFinOps人材の確保が課題になっています(出典: 日経クロステック, 2022年12月)。
OCIの強みはオラクルDB既存ユーザーへの互換性です。自治体が長年運用してきたオラクルDBをそのまま移行できるBYOL(Bring Your Own License)対応が、ライセンスコストの圧縮につながります。また、オラクル社が直接移行支援プログラムを提供しており、RKKCSのような専業パートナーとの連携体制も整備されています。
GCInsightのコスト効果ページでは、移行後の実際のコスト推移を自治体規模別に確認できます。
デジタル庁が2025年12月に公示したガバメントクラウド令和8年度募集調達仕様書では、引き続き複数CSPの競争環境が維持されます。現在条件付き採択のさくらのクラウドが2026年度から本格参入すれば、国産クラウドという選択肢が加わります。
OCI陣営では、RKKCSが2025年度末移行期限を迎えた自治体の移行完了後、2026〜2027年度にかけて稼働件数を増加させる見込みです。現在4件のOCI稼働数は今後数十〜百件規模に拡大する可能性があります。
以下の判断フローを参考に、担当自治体の状況を整理してください。
AWSが適しているケース:
OCIが適しているケース:
コスト試算は年間ベースではなく、移行費用・運用費用・移行後3〜5年の総所有コストで比較することが重要です。特にデータ転送料は、移行後に「想定外のコスト増」として顕在化しやすい費用項目です(出典: govcloud-cost-guide参照、ガバメントクラウドのコスト解説)。
ガバメントクラウドのCSP選定において、AWSの97%シェアは「実績の安心感」を提供しますが、それはイコール「コスト最適解」ではありません。OCIはデータ転送料の優位性(月10TB無料・超過単価1/4)とオラクルDB互換性により、特定の自治体にとって有意なTCO削減の選択肢となります。
自治体情報システム担当者が取るべきアクションは以下の3点です。
GCInsightでは、クラウド別の移行進捗・コスト効果データ・パッケージ一覧を継続的に更新しています。CSP選定の検討材料としてご活用ください。
本記事は以下の一次情報源をもとに執筆しています。
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