
令和8年3月31日公表の「令和8年度デジタル庁調達改善計画」を読み解く。契約総額1,788億円・プロポーザル型企画競争31%拡大・DMP本格稼働など、ベンダー・SIerが対応すべき調達ルールの変化を一次ソースをもとに解説します。
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デジタル庁は令和8年3月31日、「令和8年度デジタル庁調達改善計画」を公表しました(出典: デジタル庁 調達改善計画ページ)。この計画は毎年策定・公表される行政文書ですが、ガバメントクラウド移行が本格化した令和6年度以降、デジタル庁の契約規模が急拡大しており、ベンダー・SIer各社にとって見逃せない内容となっています。
令和6年度の契約総額は1,788億円に達しており、前年度(令和5年度: 1,037億円)から約72%増加しました(出典: 令和8年度デジタル庁調達改善計画PDF)。この増加の主因は、ガバメントソリューションサービス(GSS)への移行進展と、それに伴うネットワーク環境構築に係る大規模契約の増加です。
政府調達に参入するベンダーにとって、調達改善計画の内容を把握することは、提案戦略や体制整備の方向性を決める重要な判断材料となります。本記事では一次ソースに基づき、令和8年度計画の主要変更点を実務目線で解説します。
まず最新の調達状況を把握するための基礎数値を整理します。
flowchart TD
A["令和6年度 デジタル庁調達\n総額1,788億円・459件"]
B["競争性のある契約\n329件(72%)"]
C["競争性のない随意契約\n130件(28%)"]
D["総合評価落札方式\n金額ベース97%"]
E["プロポーザル型企画競争\n件数ベース31%"]
A --> B
A --> C
B --> D
B --> E
| 指標 | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|---|
| 総契約金額 | 741億円 | 1,037億円 | 1,788億円 |
| 総契約件数 | 283件 | 385件 | 459件 |
| 競争性のある契約(件数比) | 75% | 72% | 72% |
| 競争性のない随意契約(件数比) | 25% | 28% | 28% |
| プロポーザル型企画競争(件数比) | 試行開始 | 25% | 31% |
(出典: デジタル庁 令和8年度・令和7年度・令和6年度 調達改善計画)
注目すべきは、プロポーザル型企画競争の拡大です。令和5年度に試行導入された同方式は、令和6年度に件数ベースで31%、金額ベースで30%にまで拡大しました。大企業・中小企業問わず、この方式への対応が調達参加の必須条件になりつつあります。
令和5年度に試行導入されたプロポーザル型企画競争は、技術力・企画力を重視した選定方式です。価格のみによる最低価格落札方式と異なり、提案内容の質によって受注者が決まります。
令和8年度計画では、この方式を「引き続き活用」するとしており、中小・スタートアップ企業等の参入機会拡大が明示されています(出典: 前掲 令和8年度調達改善計画PDF)。
ベンダーへの実務影響:
令和6年度末に本格実施されたデジタルマーケットプレイス(DMP)を「積極的に活用する」と明記されています。DMPはカタログサイト上に登録されたサービスから行政機関が調達する仕組みで、SaaSを中心に対象が広がっています(出典: デジタル庁 調達改善フォローアップ資料)。
ベンダーへの実務影響:
「仕様内容・要件案等に関して、複数の事業者から意見を聴取するなど特定の事業者に有利に働く状況を可能な限り排除する」との方針が継続して明記されています。
また新規参入事業者への配慮として、以下が盛り込まれています:
令和5年度実績として、電子入札95%・電子契約**68%**を達成し、政府が設定していた令和7年3月末目標(電子入札80%・電子契約50%)を上回りました(出典: デジタル庁 令和7年度調達改善計画)。令和8年度計画では、この高水準を維持・向上させる方向性が示されています。
ガバメントクラウドを構成するクラウドサービス自体の調達にも、令和8年度から重要な変化があります。
令和8年度募集では、既存の4社(AWS・Google Cloud・Microsoft Azure・OCI)に加え、さくらのクラウドが令和8年度からの利用開始に向けて整備を完了させる予定です(出典: デジタル庁 令和8年度ガバメントクラウド調達仕様書)。
各クラウドプロバイダーの選定や、それぞれのコスト比較については、GCInsightのクラウド別ベンダーページ(/cloud)でデータを確認できます。
令和8年度の調達改善計画を踏まえ、ベンダー・SIer各社が対応すべき実務事項を整理します。
自治体システム標準化への対応を進めるベンダーにとっては、デジタル庁の調達改善の動向が直接の影響を与えます。TKC・富士通・NEC・日立など主要ベンダーの対応状況については、GCInsightの富士通・NEC・日立のパッケージ比較記事とTKCのガバメントクラウド対応記事で詳しく解説しています。
デジタル庁の調達改善は国の機関を主な対象としていますが、地方公共団体もガバメントクラウドを通じて間接的に影響を受けます。
確認すべき事項:
ベンダー選定の透明性確保: デジタル庁が推進する「特定事業者優位性の排除」の考え方は、自治体の情報システム調達にも適用が推奨されています。随意契約理由の明確化・競争性の確保を点検してください。
DMP活用の検討: デジタル庁が本格稼働させたDMPは、将来的に地方公共団体への展開も視野に入っています。自治体のSaaS調達の選択肢が増える可能性があります。
ガバメントクラウド移行への影響: ガバメントクラウドの調達仕様(令和8年度募集)では、さくらのクラウドが新たに加わります。移行先クラウドの選択肢と価格競争への影響を確認してください。コスト動向はGCInsightのコスト効果ページ(/costs)で追跡できます。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年3月31日 | 「令和8年度デジタル庁調達改善計画」公表 |
| 令和8年4月以降 | ガバメントクラウド令和8年度募集の本格運用開始(さくらのクラウド含む) |
| 令和8年11月頃 | 令和8年度上半期 調達改善計画自己評価(概要)公表予定 |
| 令和9年3月末 | 令和9年度 調達改善計画公表予定 |
| 令和9年度 | プロポーザル型企画競争のさらなる拡大、DMP対象範囲拡充 |
令和8年度デジタル庁調達改善計画が示す方向性は明確です。
ガバメントクラウド関連の標準化パッケージや自治体向けシステムの最新動向は、GCInsightのパッケージ一覧(/packages)でも随時更新しています。調達改善計画の変化に合わせた戦略立案の参考資料としてご活用ください。
Q1. プロポーザル型企画競争は中小企業でも参加できますか?
A. 参加可能です。デジタル庁は「中小・スタートアップ企業等の参入機会拡大」を明確な政策目標として掲げており、令和6年度の実績では同方式の案件144件のうち47件(32.6%)が中小・スタートアップ企業等との契約でした(出典: デジタル庁 調達改善フォローアップ資料)。実績よりも技術力・企画力が評価されるため、実績の少ない事業者でも提案内容次第で受注の可能性があります。
Q2. デジタルマーケットプレイス(DMP)に登録するには何が必要ですか?
A. DMP登録にはISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)への対応が要件になる場合があります。自社サービスのセキュリティ要件の確認と、デジタル庁が公表するDMP登録ガイドラインの最新版を参照してください。なお、DMP自体は令和6年度末から本格稼働しており、登録事業者の公募が継続して行われています。
Q3. 随意契約から競争契約への切り替えは今後も進むのですか?
A. 令和8年度計画でも「真に随意契約によらざるを得ない理由等を審査し、引き続き競争性のある契約への移行が進むよう厳正な審査を実施していく」と明記されています。令和6年度時点で随意契約は28%(件数比)ですが、デジタル庁としての基本方針は競争性のある契約への誘導であり、随意契約での継続受注を前提とした事業計画は見直しが必要です。
Q4. 自治体の調達改善は国と別の制度ですか?
A. 制度としては別です。デジタル庁の調達改善計画は国の機関(中央省庁)が対象です。ただし、ガバメントクラウドを通じた共同利用や、デジタル庁が推奨する調達方針は地方公共団体の調達実務にも波及します。自治体のシステム標準化に関する最新動向はGCInsightのダッシュボード(gcinsight.jp)で追跡できます。
本記事は以下の一次資料に基づいて作成しました。
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