
RKKCSが宇和島市のOCI環境で検証したコスト削減効果を徹底解説。インスタンス起動時間見直しで年間600万円削減、保守回線共同利用で約170万円追加削減。一方でランニングコストは約1億1200万円(+28%)増加した実態と対策を2026年最新データで解説します。
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自治体システムベンダーの中で、ガバメントクラウドへの移行実績において先駆的な存在となっているのが株式会社RKKCS(本社:福岡県福岡市)です。RKKCSは2023年2月、愛媛県宇和島市の基幹系・内部情報系を含む全55業務システムをガバメントクラウドへリフトしました。ガバメントクラウド先行事業において最多の業務システム数を移行した事例として注目されています(出典:RKKCS、2023年2月)。
この宇和島市での移行経験は、その後の検証事業にも活かされています。デジタル庁が2026年3月に公開した「令和6年度ガバメントクラウド検証事業報告書」では、RKKCSが関与する宇和島市のOCIおよびAWS環境での詳細なコスト検証結果が公開されており、自治体IT担当者にとって貴重な一次情報となっています。
本記事では、この報告書に基づき、RKKCSがガバメントクラウドのOCI環境でどのようなコスト削減を実現したか、そして実態のランニングコストはどうなっているかを詳しく解説します。
デジタル庁の報告書によれば、宇和島市のランニングコストは現行環境と比較して約1億1,200万円増加(+28%) しています(令和6年度検証結果)。
この数字を見て「ガバメントクラウドは高い」と結論づけるのは早計です。増加の背景には構造的な要因があります。
現行環境(コストA):
「ソフトウェア借料(ASP利用料)」の中に
システム運用作業・データセンター利用費・通信回線費・クラウド利用経費
が内包されている
↓ ガバメントクラウド移行後(コストB)
「ソフトウェア借料」は削減
「通信回線費」「クラウド利用経費」が費目替えで顕在化・増加
つまり、これまでASP料金に隠れていたコストが個別費目として可視化されたことが、見た目上の増加の主因です。また、宇和島市では庁内にディザスタリカバリやスプールサーバーを継続設置しているため、移行後もハードウェア借料・保守費が残存しています。
| 費目 | 現行(コストA) | 移行後(コストB) | 増減 |
|---|---|---|---|
| ソフトウェア借料(ASP等) | 大(内包) | 削減 | マイナス |
| 通信回線費 | 内包(按分) | 単独負担で顕在化 | プラス |
| クラウド利用経費 | 内包 | 個別計上 | プラス |
| ハードウェア借料・保守費 | 発生 | 継続発生 | 変化なし |
| システム運用作業 | 0 | 0 | 変化なし |
出典:デジタル庁「令和6年度ガバメントクラウド検証事業報告書」(2026年3月)
令和6年度の検証でRKKCSが取り組んだ主要施策は、Compute Instanceの起動時間見直しです。
常時稼働させていたインスタンスを精査し、業務時間に合わせた「平日稼働」モデルを導入。AWSとOCI両環境で見直しを実施した結果、約600万円の削減効果が見込まれることが確認されました。
OCIの検証環境での具体的な数値は以下のとおりです(出典:デジタル庁報告書)。
| 運用パターン | 月額利用料 | 削減額(月) |
|---|---|---|
| 常時稼働 | 約153.0万円(Computeのみ 約49.6万円) | — |
| 平日12時間稼働(月20日) | 約143.9万円(Computeのみ 約40.4万円) | 約9.2万円 |
平日稼働モデルでは月額約592ドル(Computeのみ)の削減となり、年間換算では約7,000ドル超(100円換算で約70万円以上)の効果を見込みます。全インスタンスへの展開時の合計効果が約600万円という試算です。
OCI環境では、ベンダーの保守拠点からガバメントクラウドへの接続回線を複数団体で共同利用することで、費用を按分できます。宇和島市での検証では約170万円の削減効果が確認されています。
共同利用化の背景として注目すべき点があります。AWS環境では宇和島市が単独利用のため費用按分ができないのに対し、OCI環境では共同利用を前提とした設計が可能です。この構造的な違いが、OCIを選択する費用面での優位点の一つとなっています。
インスタンスの自動起動・停止を実現するために、RKKCSは以下の3手法を検証しました。
flowchart TD
A["自動起動・停止の選択肢"] --> B["手法1: Instance Scheduler\nAWS風のスケジュール管理"]
A --> C["手法2: リソース・スケジューラ\nOCI専用(2024年5月〜)"]
A --> D["手法3: OCI CLI + cron\n管理用サーバーで遠隔制御"]
B --> E["課題: インスタンス毎に設定\n管理煩雑・コンテナ不可"]
C --> F["課題: rootユーザーのみ操作可\nコンテナ不可"]
D --> G["課題: Linux習得必要\n管理用サーバーコスト増"]
令和6年5月にOCIがリリースした「リソース・スケジューラ」はコンソール上で一元管理できる優れた手法ですが、現状のガバメントクラウドポリシーではrootユーザーのみ操作可能という制約があります。RKKCSは利用可能な場合、rootユーザーによるポリシー設定でこの手法の活用を推奨しています。
令和5年度の中間報告(2024年9月)では、宇和島市のランニングコスト増加は約3,100万円(+8%) でした。それが令和6年度には約1億1,200万円(+28%) へと拡大しています。
この変化の主な要因は、令和5年度時点では「保守回線の費用按分を今後見込む」として対策前の状態でコストAとコストBを比較していたのに対し、令和6年度では実際のシステム全体像を含めたより包括的な費用構造を反映したためです。
須坂市(電算)の令和6年度検証でも、ランニングコストは約2,300万円増加(+5%) という結果が出ています。こちらはデータセンター利用料の削減(OCI共同利用による按分効果)と通信回線費削減が寄与し、宇和島市よりも増加率が小さくなっています。
コスト検証に加えて、RKKCSは標準準拠システムの本稼働においても実績を積み上げています。
2025年7月28日、福岡県広川町・熊本県相良村・球磨村の3自治体で、RKKCSが自社開発した新総合行政システム(標準仕様書準拠)がガバメントクラウド上で本稼働しました。RKKCSのお客様における標準準拠版システムのガバメントクラウド稼働は初となります(出典:RKKCS、2025年7月)。
自治体システム標準化対象の20業務に対応した標準準拠版の提供体制を整備しており、既存ユーザーへの順次移行を支援しています。
RKKCSが提供するシステムを利用している自治体は、GCInsightのパッケージ一覧から標準化対応状況を確認できます。
RKKCSの宇和島市での検証から導き出せる実務的な示唆をまとめます。
1. 「起動時間の見直し」が最も効果的な初手
常時稼働のインスタンスを洗い出し、業務時間外は停止する運用を導入することが、最も即効性の高いコスト削減策です。RKKCSの事例では600万円規模の効果が確認されています。
2. OCI環境は共同利用設計が前提
保守回線の費用按分など、複数団体での共同利用を前提とした設計がOCIコスト最適化の鍵となります。単独利用ではAWSに比べてコスト優位が出にくい構造です。
3. 移行直後のコスト増加は「費目替え」が主因
ガバメントクラウド移行後のコスト増加の多くは、従来ASP料金に内包されていた費用が可視化されたものです。純粋な費用増加分と費目替え分を切り分けて評価することが重要です。
自治体のガバメントクラウド移行コストの詳細比較はGCInsightのコスト効果ページでも確認できます。
Q1. RKKCSのシステムを使っている自治体は、いつまでにガバメントクラウドに移行する必要がありますか?
標準化対象20業務については、政府方針として原則2025年度末までの標準準拠システムへの移行が目標とされています。ただし、特定移行支援システムとして認定を受けた場合は最大5年間の延長が認められています。RKKCSは2025年7月に標準準拠版の本稼働実績を持っており、移行スケジュールについては個別に相談することを推奨します。
Q2. OCI環境でのコスト削減を最大化するには何をすべきですか?
デジタル庁報告書で示されたRKKCSの検証結果に基づけば、(1)インスタンスの起動時間最適化、(2)保守回線の共同利用化、(3)マネージドサービス活用による運用自動化、の3点が有効です。特に複数自治体でのOCI環境共同利用を設計段階から組み込むことが、コスト削減効果を最大化するポイントです。
Q3. 宇和島市のコストが+28%増加したのに、ガバメントクラウド移行は本当にメリットがあるのですか?
コスト面だけで判断するのは適切ではありません。ガバメントクラウド移行によって得られるメリットには、(1)ソフトウェアアップデートの標準化による業務継続性向上、(2)セキュリティ対応の統一、(3)標準準拠システムへの切り替えによる将来的なベンダーロックイン緩和、などがあります。宇和島市のコスト増加も、費目替えによる可視化分を除けば純粋な増加幅は限定的です。
RKKCSが宇和島市で実施したガバメントクラウドのOCI検証は、自治体IT担当者にとって最も信頼性の高い一次情報の一つです。主要な知見を整理します。
自治体のガバメントクラウド移行を検討中の担当者は、GCInsight(gcinsight.jp)でコスト比較データや移行進捗状況を確認することをお勧めします。RKKCSユーザーの自治体についてはダッシュボードから対応状況を参照できます。
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